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第403話

 それから二ヶ月ほどが経った。  アースガルズでの暮らしは、何も起こらないが平和そのものだった。死合いがないのは少々物足りないけれど、久しぶりに穏やかな日々を過ごせている。  ちなみに、ポストは約二日で完成した。完全に自分の都合だが、なるべく早く作り直した方がいいと思ったのだ。  できたポストは世界樹・ユグドラシルの根本に立て、投函・回収しやすくした。おかげでかなり気軽に手紙を出せるようになった。話したいことがたくさんありすぎて、一日二通以上出してしまう日もあった。  例の倉庫は、少しずつ清掃中である。  ホームセンターのような広さの場所を一人で掃除するのはかなり骨が折れることだったが、他にやることもないので毎日黙々作業していた。棚を移動させたり古くなった物を大量に捨てに行ったり……等々、結構な重労働が多い。  けれど、おかげで以前より腕の筋肉がついてきて、日課の素振りがかなり楽になった。これまで腕力に関しては全く兄に敵わなかったが、次に手合わせした時は互角になっているかもしれない。そう考えるだけでわくわくする。  そんなある日、朝食の準備をしているところにバルドルがウキウキとキッチンに入ってきた。明らかに足取りが軽かった。 「おはよう、アクセル」 「おはようございます、バルドル様。なんだか今日はご機嫌ですね」 「わかる? 実はね、ホズが遊びに来てくれることになったんだ」 「えっ、そうなんですか? それはよかったですね」 「うん、すごく嬉しい! あの子に会うのは本当に久しぶりなんだ。最高級のおもてなしをしなきゃね。アクセル、手伝ってくれる?」 「ええ、もちろんです。こちらには何日か滞在する予定なんですか?」 「三日間だって。短いよねぇ……ずっといてくれればいいのに」  そう言って唇を尖らせるバルドルは、いつもより可愛く見えた。  ――本当に嬉しいんだな、バルドル様……。  それなら、彼の邪魔にならないように自分もできる限りお手伝いしてあげなくては。

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