404 / 2197

第404話

「ホズ様は何か好きな食べ物とかありますか? 作れそうなら俺が用意しますよ」 「ホズはあまり好き嫌いがない子なんだ。出されれば何でも食べるよ。それよか、客室の掃除をして欲しいかも。ホズ専用の部屋があるんだけど……」 「はい、わかりました」  素直に頷き、アクセルは手早く朝食の準備をした。バルドルには及ばないが、自分もホズに会うのが楽しみだ。一体どんな方なんだろう。  ――バルドル様より強いって話だけど、本当だろうか。  ホズは目が極めて悪いと聞いている。視覚から得られる情報は全体の七、八割を占めるため、目が悪いのはかなりのハンデになるはずだ。  にもかかわらずバルドルより強いというのは……ちょっと想像できない。  そういう意味でも、興味があった。 「楽しみですね、バルドル様」 「うん、とっても。早く来てくれないかなぁ」  すぐにいらっしゃいますよ……と、アクセルは微笑んだ。  頬を緩ませるバルドルが、少し兄に重なった。 ***  お昼頃になり、アクセルはバルドルに連れられて世界樹(ユグドラシル)の元へ向かった。 「そろそろホズを迎えに行くよ。ついてきて」 「はあ、しかしお屋敷の掃除が全部済んでいないのですが……」 「そんなのいいよ。ホズを連れてくるのが先。さ、行こう行こう」  背中を押され、仕方なく掃除用のエプロンを外す。そしてバルドルの後ろからついていくことにした。  ホズが現れるゲートも、かつてアクセルがヴァルハラから来たのと同じように、世界樹(ユグドラシル)に出現するらしい。世界樹(ユグドラシル)はありとあらゆる世界に跨って生えている……という話はどうやら本当のようだ。  どうせそこまで行くのなら……と、アクセルは兄への手紙を真新しいポストに投函した。 「そろそろかなぁ?」  うずうずと世界樹(ユグドラシル)を眺めるバルドル。  ――バルドル様、めっちゃはしゃいでる……。  彼の喜びようにちょっと笑いそうになった。今の時点でこれでは、本物のホズが現れたらすっ飛んで行きそうだ。

ともだちにシェアしよう!