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第405話

 数分経って、世界樹(ユグドラシル)の根本が淡く光り始めた。光が伸び縮みして扉ほどの大きさになり、やがて中心が人型に輝く。  ちょっと眩しい……と手を翳したら、すぐに明るさが収まって元の世界樹(ユグドラシル)に戻った。  世界樹(ユグドラシル)の根本には、一人の青年が立っていた。  次の瞬間、バルドルの顔が綻んだ。 「ホズ!」  一目散に青年に駆け寄り、思いっきりハグをする。挨拶代わりに頬にキスしたり、満足げに頬擦りしたりと、出会えた喜びを全力で表現していた。アクセルが近くにいるのも忘れている様子だった。 「久しぶりだね……会いたかったよ。元気だったかい?」 「ああ。兄上も息災だったか?」 「うん、もちろん。来てくれて本当にありがとう。ゆっくりしていってね」  ホズはかなり落ち着いているようで、バルドルの愛情表現に意を唱えることはなかった。普通なら多少は恥ずかしがるものだが、ハグやキスを当たり前のように受け止めているみたいだった。  ――あれがホズ様か……。  バルドル同様スタイルのいい青年だが、バルドルよりカッチリした雰囲気を纏っている。茶色の髪はさらりとしたストレートで、うなじのところで綺麗に切り揃えられていた。  瞳は淡いグレーだったが、パッと見る限りでは目が悪いようには見えない。常人と同じように目は開いているし、近づいて来たのがバルドルであることもきちんと認識しているみたいだった。  本当に目が悪いのかなぁ……と少し首をかしげていると、 「……誰かいるのか?」 「えっ……?」  ホズがこちらに顔を向けたので、思わず目を丸くした。  今まで一言も声を発さなかったのに、何故ホズはバルドルの他に誰かいるとわかったんだ……? 「ああ、違うんだよ。怪しい者じゃない」  バルドルが急いで弁明する。

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