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第408話

 屋敷に戻り、早速昼食をとることになった。  好き嫌いは特にないというので、とりあえず食事系のパンケーキを用意してみた。ふわふわに焼いたパンケーキにバターや目玉焼きを乗せて、一緒にサラダやマッシュポテトも出してみた。  ちなみに、別の鍋ではヴァルハラ名物・イノシシのシチューを煮込んでいるところである。バルドルが「ホズにもイノシシのシチューを食べさせてあげたい」と言うので、昼食の準備をするのと一緒に煮込んでおいたのだ。ホズの口に合えばいいが。 「今日はどこで食事しましょうか?」  皿にパンケーキ等を盛りつけながら、バルドルに尋ねる。 「いつも食事をしているテーブルだと、ちょっと狭いかなと思ったんですけど」 「大丈夫だよ。あのテーブルはもともと四人用だ。三人でも余裕だと思う」 「そうですか。ならそこに運んじゃいますね」  テキパキと作業を進め、アクセルは食事の皿をいつものテーブルに運んでいった。そこには既にホズが着席していて、微動だにせずじっとしている。 「ホズ様、食事をお持ちしました」 「ああ、世話をかけるな」 「いえ。こちらに置いてもよろしいですか?」 「適当でいい。食事をするのに不自由はないからな」 「そ、そうですか……」  とりあえず、いつもと同じようにパンケーキの皿を真ん中に置き、その脇にフォークとナイフを置いた。誤ってグラスを倒さないよう、水は少し離れたところに置いてみた。 「お待たせ~! じゃあ早速いただこうか」  バルドルが当たり前のようにホズの隣に座ったので、アクセルは二人の向かい側に腰を下ろした。  最初は食事をサポートするために並んだのかなと思っていたが、ホズの食べっぷりを見るにつけ、ひとつの疑問が浮かんできた。  ――ホズ様、本当に目が悪いのかな……。  まるでどこに何があるか、全て見えているような振る舞いだった。ナイフとフォークの位置も間違えない、誤ってグラスも倒さない、食べ物もこぼさず、普通にマナーよく食事している。  そう言えば、出会った時もアクセルが挨拶した途端、こちらの首元に刃を当ててきた。ああいう芸当は、目がハッキリ見えていないと難しいのではないかと思う。

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