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第409話
どうしても気になって、アクセルは思い切って尋ねた。
「あの……ホズ様は、そこに物があるかどうかをどうやって判断しているんですか?」
「どうとは?」
「いえ、ホズ様は目が悪いと聞いていたので……」
「目が悪いのは本当だよねぇ?」
バルドルが口を挟んでくる。
「昔はちゃんと見えてたけど、ミーミルの泉の水を飲んだら視力がなくなっちゃったんだよね。その代わり、腕っぷしは爆発的に上がったけど」
「ミーミルの泉……?」
「世界樹・ユグドラシルの根本に湧いている『知恵の泉』だよ。父上が魔術を得る時にも、この泉の水を飲んだんだ。その代わり、片目が犠牲になったけどね」
「何かを得るためには、それ相応の対価が必要だからな」
と、ホズが言う。
「きみもヴァルハラに招かれたからには、生前に相当な鍛錬をしたはずだ。強くなるということはそれだけ時間がかかるし、当然のことながら一朝一夕にはいかない。犠牲にしたこともたくさんあっただろう。……つまりはそういうことだ」
「…………」
「俺は兄上を守れるくらい強くなりたかった。だから泉の水を飲んだ。それで力を得る代わりに視力を失った。そのことを後悔はしていないが……兄上のお姿を見られなくなったのは、今でも残念に思っている」
「ホズ様……」
「それはともかく、何故見えていないのに物があるかどうかがわかるのか……だったな」
ホズがフォークとナイフをテーブルに置いた。
「俺も最初はどこに何があるのかさっぱりわからなかった。誰かに話しかけられても声だけではきちんと判別できなかったし、食事の時は粗相をしっぱなしだった。目が見えなくては、いくら強くなっても意味がないと思っていた」
「…………」
「だがある時、気付いたんだ。視覚以外の感覚が以前より鋭くなっていることに」
ホズは指先でグラスを軽く弾いた。キィィン……という音がして、中の水が微かに振動した。
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