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第412話
「あの、ホズ様……万が一ということもありますから、手合わせは真剣ではなく模擬刀か何かで……」
そう言いかけたら、突然ホズが手にしていた武器を地面に置いた。
そして一枚の黒い布をこちらに差し出してきた。
「これをつけてくれ」
「? これは……?」
「ただの目隠しだ。それがあれば、武器なしの鍛錬でも強くなれる」
「……え。いや、あの……それは……」
アクセルはホズと黒い布を交互に見やった。
ホズは目が見えなくても十分強いが、自分は目隠ししたら本当に何もできなくなってしまうのだが……。
「大丈夫だ。今回俺は武器を使わない。素手で殴りかかるだけだ。きみはそれをできるだけ避ければいい」
「ええと……それは、わかっていますが……」
「ならつべこべ言わずにやってみろ。迷っている時間がもったいない」
「は、はいぃ……!」
断り切れず、アクセルは勢いのまま黒い布で目を覆った。解けないよう頭の後ろでしっかり結び、改めて顔を上げる。
――う……何も見えない……。
目を開けても何も見えない。当たり前だが、本当に真っ暗だ。
そう言えば、例の洞窟に入った時も何も見えなかったことを思い出す。あの時は狭い洞窟を手探りで進めばいいだけだったが――というか、敵はいなかったからそういう意味での恐怖は感じなかったが――今回はすぐ近くに手合わせ相手のホズがいる。
こんな状況でどうやって動けというのだろう……。
「ぶっ!」
突然横から頭を殴られてしまい、アクセルは前のめりに倒れた。全く予想していなかったところからの不意打ちで、受け身も防御もできなかった。正直、かなり痛かった。
「……大丈夫か?」
「は、はい……」
未だに殴られたところがジンジンするのだが。
――いや、これ避けろとか絶対無理だろ……!
自分はホズと違って普通に目が見えるのだから、わざわざ目隠し訓練なんてしなくても……とも思う。それよか、いつもの状態で模擬刀を使った手合わせがしたかった。
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