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第413話

「さあ、どんどん行くぞ」 「えっ!? ちょ……ぐぇっ!」  反射的に頭を庇ったら、今度は腹部に打撃を喰らって嘔吐しそうになった。  咳き込む間もなく再び腹部を殴られそうになり、反射的に後ろに飛びずさった。 「ホ、ホズ様、待っ……うわっ!」  シュッ、と拳を繰り出された音が聞こえ、何も考えずに両腕を顔の前でクロスした。  交差した両腕に拳が当たり、顔への殴打は何とか免れた。 「なるほど、勘は悪くない」 「……!」 「後はもっと精度が上がれば完璧だ」 「っ……く!」  再びシュッ、シュッ、と顔の横で空気が裂け、アクセルは首を捻ってそれを避けた。  ホズの拳は思った以上にスピードが速くて、時折殴られたり頬が切れたりすることもあった。反撃する余裕など全くなかった。  ――でも、何となくわかってきた気がする……。  拳だけに限らず、武器を振るえば必ず近くで音がする。相手の気配も感じるし、それによってどちらから攻撃が来るかもわかってくる。  それに合わせて動くことができれば、攻撃を防ぐことは可能だ。  ――というかよく考えたら、今までも相手の攻撃なんてあまり見てなかったよな……。  相手と至近距離でつばぜり合いをする時、相手の行動なんていちいち見ていられない。  相手の剣が右から来たから、じゃあ俺は右に剣を出して防ぎつつ、武器を弾きながら攻撃を加え……なんて細かいことを考えていたら間に合わなくなってしまう。  だから今までの経験と勘、そして相手の癖を認識した上で、ほぼ反射的に身体を動かしているのだ。日頃の鍛錬が大事なのは、そういった時にきちんと反射行動がとれるようにするためである。  ――そうか……目が見えなくても戦闘力を落としてはいけないんだ……。  激しい戦いの最中、敵から不覚にも目潰しを受けてしまうこともある。でも敵は待ってくれず、チャンスとばかりに攻め立ててくる。そんな時に「見えなかったから」と言い訳できるはずもない。 「っ……」  拳を受け止めるついでに、アクセルはガシッとホズの腕を掴んだ。  そしてもう片方の手で自分も拳を繰り出した。

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