414 / 2197

第414話

 それは難なくホズに止められてしまったが、彼が小さく呟いたのが聞こえた。 「……調子が出てきたか」 「! ……うあっ!」  ホズに止められた拳をそのまま掴まれ、ブンと勢いよく投げ飛ばされてしまった。受け身を取り損ね、思いっきり地面に叩きつけられ、全身に打撲と擦り傷ができる。  アクセルは勢いよく跳ね起き、空気を切ってくる拳をギリギリのところで避けた。  ――これ、真剣使ってたら死んでるぞ……!  今まで何発喰らったかわからない。全身がヒリヒリ痛むし、身体を動かす度に筋肉がジンジンしてくる。きっと今の自分はひどい姿をしているに違いない。  でも……。 「はっ!」  右手で繰り出した拳を軽く受け流され、カウンターで腹部に打撃を喰らう。  えずきたくなるのを堪え、奥歯を噛みしめつつ腹に入った腕を掴み返した。  腕をひねり上げて投げ飛ばそうとしたら、今度は手のひらで顔を掴まれ、思いっきり突き放されてしまう。 「はっ……はっ……」  相変わらず攻撃はほとんど当たらない。でも目に頼らない戦い方は、何となくわかってきた。コツを掴めば、目が見えなくても十分戦えることがわかった。攻撃がいなされるのは単に自分が未熟なだけで、もっと鍛錬を積めば目潰しも怖くなくなるかもしれない。  そう思ったら、何だか楽しくなってきた。  次はどこから攻められるだろうか……と、全身の感覚を澄まそうとした時、 「ぶっ……!」  いきなり頭から水をぶっかけられ、さすがに動きが止まった。勢い余って目隠しの布もズレてしまった。  バルドルがバケツ片手に近くに立っている。 「バ、バルドル様? 何ですか、いきなり……」 「うん、今日はそのくらいにした方がいいかなと思って。きみ、傷だらけだからさ」 「えっ……?」  改めて自分を見下ろしたら、我ながらなかなかひどい有様だった。  何度も投げられたせいで服は砂や血でボロボロ、肌が出ている部分は擦り傷や青痣ができており、見るからに満身創痍という感じだった。きっと裸になったら、もっと傷が目立つことだろう。

ともだちにシェアしよう!