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第414話
それは難なくホズに止められてしまったが、彼が小さく呟いたのが聞こえた。
「……調子が出てきたか」
「! ……うあっ!」
ホズに止められた拳をそのまま掴まれ、ブンと勢いよく投げ飛ばされてしまった。受け身を取り損ね、思いっきり地面に叩きつけられ、全身に打撲と擦り傷ができる。
アクセルは勢いよく跳ね起き、空気を切ってくる拳をギリギリのところで避けた。
――これ、真剣使ってたら死んでるぞ……!
今まで何発喰らったかわからない。全身がヒリヒリ痛むし、身体を動かす度に筋肉がジンジンしてくる。きっと今の自分はひどい姿をしているに違いない。
でも……。
「はっ!」
右手で繰り出した拳を軽く受け流され、カウンターで腹部に打撃を喰らう。
えずきたくなるのを堪え、奥歯を噛みしめつつ腹に入った腕を掴み返した。
腕をひねり上げて投げ飛ばそうとしたら、今度は手のひらで顔を掴まれ、思いっきり突き放されてしまう。
「はっ……はっ……」
相変わらず攻撃はほとんど当たらない。でも目に頼らない戦い方は、何となくわかってきた。コツを掴めば、目が見えなくても十分戦えることがわかった。攻撃がいなされるのは単に自分が未熟なだけで、もっと鍛錬を積めば目潰しも怖くなくなるかもしれない。
そう思ったら、何だか楽しくなってきた。
次はどこから攻められるだろうか……と、全身の感覚を澄まそうとした時、
「ぶっ……!」
いきなり頭から水をぶっかけられ、さすがに動きが止まった。勢い余って目隠しの布もズレてしまった。
バルドルがバケツ片手に近くに立っている。
「バ、バルドル様? 何ですか、いきなり……」
「うん、今日はそのくらいにした方がいいかなと思って。きみ、傷だらけだからさ」
「えっ……?」
改めて自分を見下ろしたら、我ながらなかなかひどい有様だった。
何度も投げられたせいで服は砂や血でボロボロ、肌が出ている部分は擦り傷や青痣ができており、見るからに満身創痍という感じだった。きっと裸になったら、もっと傷が目立つことだろう。
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