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第415話

 バルドルが擦り切れた二の腕を軽く掴んでくる。 「いっ……!」 「ほらね。もうボロボロでしょう? 夢中になってると気付かないけど、身体のダメージは確実に蓄積しているんだよ」 「は、はい……」 「だから今日はおしまい。初めての目隠し訓練にしては頑張ったと思うよ。汚れを落として、怪我の手当てをしよう」 「……わかりました」  アクセルは少し肩を落とし、目隠しの布を折り畳んで地面に置いておいた武器を拾い上げた。  鍛錬が終わって気が緩んだ途端、全身の痛みがより強くなってきたような気がした。 「まずは湯浴みしておいで。泥汚れを落としてきたら、手当てしてあげるからね」 「はあ、ありがとうございます。でも手当てくらいは自分で……」 「怪我人が遠慮しないの。私が手当てした方が絶対早く治るから」 「そ、そうですか……」 「シャワーが終わったら私の部屋においで。急がなくていいからね」  そう言ってバルドルは、ホズと一緒に自室に入っていった。去り際、ホズがぽつりと 「……俺も少し怪我をしておけばよかった」  と言ったのが聞こえた。  ――いや、ホズ様に怪我させられるほど強くないしな……。  浴室前の脱衣場で、シャツとパンツを脱いで全裸になる。  改めて自分を見てみたら、全身擦り傷や打撲でいっぱいになっていた。顔にも青痣ができているし、赤く血が滲んでいるところもあった。  こういう打撲や擦り傷は、綺麗にスパッと斬られるより痛かったりする。  これ絶対沁みるよなぁ……と思いながら、恐る恐るシャワーから水を出し、足下から浴び始める。 「っ……!」  擦り剥いた膝に水がかかった途端、あまりに痛くて飛び上がりそうになった。  ――なんか、こういう痛みは久しぶりだな……。  普段は怪我をしたら真っ先に泉に入ってしまうし、死ねば寝ている間に勝手に蘇生してくれる。いつまでも痛みに悩まされることはない。  その環境が如何に便利で快適だったか、今更ながら思い知った。

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