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第416話
狂戦士モードになれば痛みも感じなくなるかな……などと考えかけ、あまりにアホらしくて自分で笑ってしまった。
痛みを我慢して全身に湯を浴び、泥や砂を落として綺麗にする。そうしている間にだんだん痛みにも慣れてきたので、アクセルはふうと大きく息を吐いた。
湯浴みを終えてバルドルの部屋に向かうと、彼はテーブルに様々な薬や包帯を並べていた。
「やあ、いらっしゃい。さ、そこに座って、服脱いで」
言われるままソファーに浅く腰掛け、上半身裸になる。
湯浴みをしている最中も結構ひどいなと思ったが、改めて裸になると、あまりに傷だらけの状態だったので少し恥ずかしくなった。
「あーあ……やっぱりボロボロだねぇ……。これは痛かっただろうな」
バルドルがとある小壷を手に取り、蓋を開けて白い軟膏を傷に塗り込んでいく。正直、水が沁みるよりずっと痛かった。叫びそうになるのを、すんでのところで堪える。
そうしてどうにか堪えていると、傍らのホズが小さく呟いた。
「……やっぱり俺も、少し怪我をしておけばよかった」
「おや、まだそんなこと言ってるの? お前は滅多なことで怪我しないじゃないか」
「でも、兄上に手当てしてもらえるなら、俺も少しは……」
「ヤキモチ焼かないの。お前とはもっと違う形で触れ合ってるでしょ」
「それは……まあ……」
ホズが頬を染めて顔を背ける。
ちょっと大人の雰囲気を感じ、アクセルは瞬時に察した。
――ああ、これは……やっぱりそういう関係なのかな……。
出会った時からやたらと距離感の近い兄弟だなと思っていたが、肉体を合わせる関係ならば全て納得である。ホズがやたらとヤキモチ(?)を焼いてくるのも当然だなと思えた。
俺だって、兄上が別の誰かを手当てしていたら妬いちゃうかもしれないしな……。
「ところで、この薬どう? グロアが作ってくれた軟膏なんだけど」
「……グロアとは?」
「傷を癒すのが得意な神さ。我々もよくお世話になっているんだよ。で、これは打撲や切り傷に効く薬だそうだ。どんな感じ?」
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