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第417話

「どう……と言われましても」  薬を塗ってすぐに怪我が治ったら苦労しない……と思っていたのだが、ふと軟膏を塗られた部分の痛みが薄れているような気がした。あれ? と思って自分を見下ろしたら、青痣や擦り傷が少し薄くなっていた。  もしやこれは、泉に入るのと同じ効果があるのでは……? 「やっぱりグロアの薬はよく効くね。さっきより傷が治ってきた気がする。痛みはどう?」 「ええ……だんだん薄れてきたような……」 「それはよかったねー。エインヘリヤルにも効果があるのか使ってみるまでわからなかったけど、効いたみたいで何よりだよ」 「……えっ?」  聞き捨てならないことを言われたので、アクセルは目を丸くした。  ホズが口を挟んでくる。 「グロアの薬は我々神が使うのを前提にしている。元人間のエインヘリヤルにも使えるかどうかはわからなかった。だが兄上が『大丈夫だよ』と仰るので、ものは試しに……と」 「ここには薬と呼べるものはこれくらいしかないからね。これが使えなかったら、あとは自然治癒に任せるしかないわけでしょ? それじゃちょっとねぇ……と思って」 「は、はあ……」  ……塗った後でそんなドッキリを告白しないで欲しい。  ――もし逆効果だったらどうしてくれるんだよ……。  おおらかなのは結構だが、ざっくりしすぎるのも考えものだ。  アクセルは苦笑いをこぼしつつ、バルドルの手当てを受け続けた。 ◆◆◆  その夜。一緒に夕食を済ませ、食器の片付けをし終わったところで、バルドルがにこやかに言った。 「それじゃあアクセル、ちょっと早いけどおやすみ。明日の朝食はいつも通りでいいからね」 「あ、はい……おやすみなさい」 「じゃ、行こうかホズ」 「……ああ」  差し出されたバルドルの腕を、ホズはやや照れながら掴んだ。何だかものすごくイイ雰囲気だった。  二人はそのまま同じ寝室に入っていった。

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