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第420話(アクセル~フレイン視点)

 ――やっぱり、バルドル様に直接頼んでみよう……。  ダメで元々だ。日帰りでもいいからヴァルハラに様子を見に戻りたい。それで兄の無事を確認できたら、すぐに戻ってくればいいんだし。  バルドル様も大事な兄弟を持つ身だから、俺の気持ちもわかってくれるはず……。  そう思って、アクセルはベッドに戻った。なるべく悪いことは考えまいと自分に言い聞かせつつ、じっと目を閉じた。 *** 「はあ……」  フレインは長い息を吐いた。特に深い意味はなかった。  すると、右隣にいたジークに苦い顔をされてしまう。 「……溜息つくなよ。気が滅入る」 「あ、ごめんね……。溜息のつもりじゃなかったんだけど」 「まあしかし、こんな状況じゃ溜息つきたくもなりますよね」  左隣にいたユーベルも大袈裟に嘆いてみせる。  フレインたちは現在、四畳程度の狭い一部屋に一人ずつ押し込められている状態だった。少なくとも一ヶ月近くはこうして外に出される順番を待っている。  三人の間はそれぞれ頑丈な鉄格子で区切られていて、会話はできるものの接触することはできない。かなり不自由な状況だ。 「早く出たいなぁ……順番まだ?」 「……知らんよ。ランク下から審査してるなら、まだまだ時間がかかると思うぞ」 「まったく、優雅じゃありませんねぇ。せめてミューのように、紅茶か何かを持ち込めばよかったです」  二部屋先に目をやったら、ミューは床に寝転がりながらペロペロキャンディーを咥えていた。持ち物は武器も含めて全部没収されているのに、どうやって持ち込んだのか疑問である。 「ラグナロクが近いのかな……。今までの『破魂の儀式』の時は、こんな風により分けられることはなかったもんね」  真面目な顔で呟いたら、ジークとユーベルも同調して頷いた。 「だろうな。本当に使えそうな戦士をランキング問わず選別してるんだ。オーディン様もいよいよ本気だな」

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