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第422話(フレイン視点)

 自宅にはもう一ヶ月近く戻っていない。  今回の選考は、五〇〇〇人以上もいるヴァルハラの戦士に、一番マッチする神器を振り分けることがメインである(マッチする神器がなかった場合は、おそらく破魂される)。戦士一人一人を選考にかけているので、待ち時間も相当長いのだ。  その理屈はわかるが、その間一度も自宅に戻れないのは困りものである。きっと今頃自宅のポストには、弟からの手紙がぎっしり詰まっているに違いない。  ――心配してるだろうなぁ、あの子。  フレインも何度か「自宅に帰りたい」と頼んでみた。私は逃げも隠れもしない、手紙を回収したら必ず戻ってくるから……と。  が、どんなに訴えても、審査担当のヴァルキリーたちには、そういった例外は一切認められないと言われた。まったく、融通の利かないことだ。 「早く終わんないかなぁ……神器選考会」  嘆くように床に寝転がったら、ジークに苦笑された。 「神器選考会……そのネーミングは謎だが、確かにその通りだな。せめてランク順に決めてくれればいいものを」 「私たち上位ランカーは大抵の武器は上手く使えるので、後回しにされているのでしょう。今回ばかりは、下位ランカーが羨ましくなりますね」 「僕、待つの好きじゃないなー。暇で暇でウズウズしちゃう。もし大きい武器与えられたら、ぶんぶん振り回して神様をぐちゃぐちゃにしよー。いいストレス発散になるもんねー」  ……少年っぽい顔をして、言うことは過激なミューである。 「しかし、戦士全員を呼び出して隔離するなんて、さすがに尋常じゃないんじゃない? ヴァルハラ空っぽになっちゃう」  そう言ったら、ジークがふむ……と顎に手を当てた。 「そこなんだよなぁ……。わざわざヴァルハラを空っぽにする意味がわからん。もう一ヶ月近く外に出てないけど、ヴァルハラで何かやってんのか?」 「どうなんでしょう……。一足先に審査が終わった戦士から、何かしら情報があってもおかしくないのに、それも全くないですからね」 「神様のパーティー会場にでもするつもりなんじゃないの?」  ミューの言葉に、フレインはハッと目を見開いた。むくりと身体を起こし、ミューの方を見やる。

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