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第425話

 ――よかった……いい夜を過ごせたみたいだ……。  嬉しいし、ちょっぴり羨ましくも思う。自分はまだ、朝まで一睡もせずに兄と交わったことはない。そこまでの体力もない。  それに……もう三ヶ月以上も兄に会っていない身としては、そろそろ温もりが恋しくなってきていた。ここのところ手紙も来ていないし、どうしているのか近況だけでも知りたい。  バルドル様が起きてきたら、ヴァルハラに戻れないか聞いてみよう……と考えつつ、アクセルは朝食の準備をした。食材があまり残っていなかったので、パンとサラダと目玉焼きのシンプルなメニューになった。  テーブルに食事を並べていると、バルドルとホズが連れ立ってやってきた。仲良く腕まで組んでいて、本当にカップルみたいだった。 「ありがとう、アクセル。全部準備してくれたみたいだね」 「いえ、これくらいは……。どうぞ、冷めないうちに召し上がってください」 「では、いただこうかな」  二人が並んで席に着き、アクセルは向かい側に着席する。  バルドルとホズは、時折お互いに水を汲み合ったり、バターナイフを貸し借りしていた。互いを思いやっているのが手に取るようにわかり、見ているこちらが微笑ましくなった。本当に幸せそうだったから、こんな日常がずっと続いたらいいのにと心底思った。  自分も兄との同居を夢見る身だから、そんな風に思うのかもしれないが……。 「ところでバルドル様……」  アクセルは、昨日から頼んでみようと思っていたことを口にした。 「実は最近、兄から全く手紙が来ていなくて……ヴァルハラの現状が全くわからないんですが……」 「え、そうなの? それは心配だね」 「はい……。ですから、その……もしチャンスがあるなら、一度……」 「ダメに決まってるだろう」  バルドルが答えるより先に、ホズがバッサリ切り捨ててきた。

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