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第426話

「何のための人質制度だと思っている。そんな簡単に世界を行き来できるなら、俺だってもっと頻繁に兄上に会いに行っているさ。それができないから、数ヶ月に一度の逢瀬を楽しみにしているんじゃないか。手紙の返事が来ていないくらいで、甘いことを考えるな」 「っ……」  厳しい正論をぶつけられ、返す言葉を失う。  ――そりゃそうだよな……。  ホズの言うことは正しい。神々の決まり事を、そんな小さな理由で覆せるはずがないのだ。兄のことは気がかりだが、そう言われてしまっては諦めるしかない……。 「……そうですよね、すみません……」  それでもやっぱり残念で、アクセルはしゅん……と肩を落とした。ダメで元々だったが、こうもハッキリだめだと言われると落ち込んでしまう。  ――兄上に会いたかったな……。  仲良し兄弟を目の当たりにしたせいか、余計に兄が恋しくなってしまう。羨ましいわけではないけれど、手紙も来ていない、声も聞けていないとなると、どうしようもなく不安になってしまうのだ。  今頃兄は、どこで何をしているのだろう。元気でいてくれればいいが……。 「まあそう落ち込まないで。会うチャンスはあるからさ」  そうバルドルが言ったので、アクセルは「えっ?」と顔を上げた。会うチャンスとは一体どういうことだろう? 「実は近々、父上がヴァルハラ全体を貸し切ってパーティーを開く予定らしくてね」  と、バルドルがパンをかじりながら言う。 「その時はアースガルズの神々だけでなく、ヴァナヘイムやアールヴヘイムにいる神も招待するつもりなんだって。それに際して、世界樹(ユグドラシル)の扉を全世界で解放するらしい」 「全世界で解放……? それって……」 「要するに、その日だけは世界樹を通っていろんな世界を自由に行き来できるってわけ。常識の範囲内でなら、一時的にヴァルハラに戻るのも自由だよ。もちろん、パーティーが終わるまでに戻って来なきゃいけないけど」 「本当ですか!?」  アクセルは思わず身を乗り出した。

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