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第428話
それから二日経って、ホズは帰って行った。
アクセルはバルドルに連れられて、世界樹のゲートまで見送りに行った。
「それでは兄上、また」
「うん、元気でね」
二人の表情は思ったより晴れやかだった。
本来ならまた何ヶ月も離れ離れになるはずが、今回は二ヶ月後にヴァルハラでパーティーが開かれる。全世界の神々が参加するので、当然バルドルとホズも招待されていた。
――パーティーで再開できるから、寂しくないんだな。
あと二ヶ月待てば、また一緒に過ごすことができる。別れの後に次の予定が入っているのと入っていないのとでは、気持ちの持ちようが全然違うのだ。
アクセルも、二ヶ月後のパーティーはとても楽しみにしている。兄に会えるのはもちろんだが、バルドルとホズ以外の神がどんな方たちなのか、少し興味があったのだ。
特に最高神オーディンは、話に聞くだけで実際に会ったことはないので、一度お目にかかりたいと思っている。
「ホズ様、この度は大変お世話になりました」
ホズがゲートをくぐり抜ける前に、アクセルは丁寧に礼を言った。
「ホズ様のおかげで、これまでより強くなれたような気がします。本当にありがとうございました。視覚だけに頼ることなく、これからも鍛錬を続けて参ります」
「…………」
ホズはしばらくこちらを見ていた。目は見えていないはずなのだが、そんなにまじまじと見つめて何を思っているのだろう……。
「俺はお前が羨ましい」
「えっ……?」
やがて口を開いたホズは、意外な言葉をぶつけてきた。
「お前にはちゃんと見える目がある。同じように自分の兄を想っていても、一時の勢いで視力を引き換えにすることはないだろう。そんな邪道に走らず、ちゃんと真っ直ぐに努力し続けるんだろうな」
「それは……」
それは……正直、アクセルにもわからない。単に自分には、視力を引き換えにする勇気がないだけかもしれない。
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