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第430話

 バルドルからは「朝ご飯食べてから行こうね」と言われているので、あまり急いでも仕方ないが、気持ちの上では一週間以上前からそわそわしっぱなしであった。 「ご機嫌だね、アクセル。顔が緩んでるよ」  食堂に入った途端、バルドルにそう指摘されてアクセルはハッと我に返った。開口一番にそんな指摘をされてしまうほどに、自分は浮かれていたみたいだ。 「すみません……兄に会えるのが嬉しくて」  正直にそう言ったら、バルドルも「うんうん」と頷いて来た。 「気持ちはわかるよ。私もホズに会えるの、嬉しいし。他にも久しぶりに会える人がたくさんいるんだ。普段こういう暮らしをしてると、そういう機会があると楽しみになるよね」 「はい。それで……ヴァルハラでのパーティーって、どういうことをするんですか?」 「なんだろう? 私は特に聞いてないけど、まあいろいろじゃない? 好戦的な神も多いから、模擬戦とかやるかもよ?」 「模擬戦ですか……。神様って、やっぱり使う武器も神様専用だったりするんですか?」 「それはそうだねぇ……。小人たちに作らせた道具もたくさんあるけど、やっぱり神器を使うのが普通かな」 「神器ですか……」 「うん。父上だったら投げたら必ず相手に突き刺さる『神槍・グングニル』だし、トールは(いかづち)を纏ったハンマー『ミョルニル』を持ってるし……他にもいろいろあるよ。うちの倉庫に保管してある『ミストルティン』も一応、神器に入るのかな」  ミストルティン……例のヤドリギのことだ。見た目は普通のヤドリギで、あんなものが武器になるとも思えないのだが、バルドルが神器というならそうなのだろう。 「じゃあ、バルドル様が模擬戦に参加する際は、あのヤドリギを使うわけですね?」 「いやいや、私は模擬戦には参加しないよ。勝負にならないもの。ほら、以前言わなかったっけ? 私はどんな武器で攻撃されても死なないって」

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