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第431話
「あ……そう言えばそうでしたね……万物の加護があるとかで」
「そう、それ。だからどんな神器で攻撃しても、私は倒せないの。それって最初から勝負にならないってことじゃない? 模擬戦やっても意味ないよね」
「ああ……それは確かに」
「だからヤドリギは必要ないよ。ここに置いておこう。万が一必要になったら取りに戻ってくればいいし」
「はい、わかりました」
そう頷き、アクセルは手早く朝食の準備をした。そして急いでパンやスープを口に入れる。急ぎすぎて途中でパンが喉に詰まりかけ、水をがぶ飲みする羽目になった。バルドルにも心配された。
――だめだな、俺……本当に落ち着きがなくなっている。
落ち着け、自分……と何度も言い聞かせ、わざとゆっくり食事をする。
どうにかこうにか食事を終わらせ、食器も全部片づけて、ようやくヴァルハラに出掛けられることになった。
心なし早足で世界樹 の前まで行ったら、木の根元が淡く光っていた。他の世界に続くゲートだ。もう開いていたようだ。
「バルドル様、早く行きましょう」
「はは、ちょっと落ち着こうね。転ばないように注意して」
バルドルに窘められたけど、落ち着いてなどいられなかった。アクセルは喜び勇んで光るゲートに飛び込んだ。
ゲートの中を二、三歩走ったら、すぐに見慣れた景色が現れてきた。
――ヴァルハラだ……!
いつもランクが張り出されている掲示板の前。そこにアクセルは立っていた。四ヶ月という期間はそんなに長くないはずなのだが、こうして見ると随分と久しぶりに思える。
思い出したように掲示板を見上げたら、戦士ランク三位のところに「フレイン」と書かれていた。一時はサボって七位にまで下がったランクも、ちゃんと元に戻してくれたみたいだ。
――兄上はどこにいるんだろう……?
早速捜しに行こう……と思っていたら、突然巨大な何かにぶつかって軽く吹っ飛ばされてしまった。
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