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第434話
が、次の瞬間誰かに抱え込まれ、巨人たちから遠ざけられる。振り下ろされるハンマーが、何故かものすごくゆっくり見えた。スローモーションでも見ているみたいだった。
安全な場所まで離れたところで、その人物は言った。
「もう……危ないじゃない。巨人族に突っ込んでいくなんて自殺行為だよ」
「あ……兄上……?」
「何であんなところにいたの? 更地に何か用だった?」
小首をかしげ、こちらを見つめてくる兄・フレイン。ずっと会いたかった人物が目の前にいた。四ヶ月ぶりだが、いつ見ても三六〇度美しい。
「兄上……」
いろいろな感情が混ざり合い、アクセルは正面から兄に抱きついた。ハグした途端、大好きな温もりを肌に感じた。柔らかな金髪から懐かしくて甘い香りがする。
「よかった……無事だったんだ……本当によかった……」
「ええ? もう、本当にどうしたの? お前、ちょっと情緒不安定になってない?」
「ヴァルハラがここまで様変わりしてたら、誰だって戸惑うだろ」
「そうかぁ……。今ちょうど大規模工事をしてるところだからね。びっくりするのも無理はないか」
兄は「よしよし」と頭を撫でつつ、優しく抱き締めてくれた。
ひとしきり抱き合った後、アクセルは改めて兄を見た。
「それにしても元気そうでよかった。手紙が途絶えたからどうしたのかと心配したぞ」
「ああ、ごめんね。こんな状況だからしばらく筆をとれなくて」
「……まあ、そうだよな。しかし、パーティーのためにここまで大規模な工事をする必要があるのか? 会場に使うのはスタジアム周辺だけだよな?」
「そうなんだけど、神器を保管する武器庫や特殊な手入れ部屋も作らないといけなかったらしくて。この際だからって、いっそのこと全部作り替えることにしたみたいだよ。神とはいえ、思い切ったことをするもんだよね」
「……? 神器は神が使う武器だろう? 俺たちには関係なくないか?」
「いや、今後は私たちも神器を使うことになったんだ。これはお前にも関係あることなんだよ」
「俺にも? どういうことだ?」
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