435 / 2199

第435話

「うん、実はね……」  兄が今までの出来事を簡単に話してくれた。  戦士全員が集められて神器選考会にかけられたこと。ほとんどの戦士は何かしらの神器を与えられたが、一部の戦士は破魂されてしまったこと。ラグナロクに備えて、これからは神器を使うことになったこと……等々。 「そんなことが行われていたのか……」  話を聞きながら、自分だけ蚊帳の外に置かれていたことを少し恨んだ。人質に出ていたから仕方がないとはいえ、そういうことは何かこう……公式文書として通達くらいして欲しいものだ。 「じゃあ、俺の神器はどうすればいいんだ?」 「それなんだよ。もう神器選考会は終わっちゃって、神器を持っていないエインヘリヤルはいないからね。『持っていない=用済み』ってことだから、早いところ誰かから神器をもらい受けないとマズい」 「そ、そうか……。どうしよう……バルドル様に話したら、何か貸してくれないかな……」 「バルドル様なら可能性ありそうだよね。というか、お屋敷にいくつか神器が保管してあるんじゃないの? そこから何か貸してもらうとか」 「ああ……一応、倉庫にヤドリギが保管されているが、あれはバルドル様の母上から『厳重保管しておくように』って言われてるものだからな。俺なんかに貸してくれるかどうか……」 「そうなの?」 「バルドル様には『万物の加護』があるから、どんな武器で攻撃されても死なないんだよ。でもヤドリギだけは例外だって聞いた事があって。それを心配した母上が『保管しておけ』って言ったそうだ」 「ふーん……?」 「まあ、とりあえず話だけでもしてみるか……。バルドル様も『こんなヤドリギが何かできるとは思えない』って言ってたし。ヤドリギがダメなら別の神器を貸してくれるかもしれないし」 「うんうん、それがいいよ」  と、にこやかに笑うと兄はくるりと背中を向けた。

ともだちにシェアしよう!