436 / 2199

第436話

「じゃあ私はちょっとパーティー会場に行ってくるね」 「何かするのか?」 「うん。なんか神器を使って余興をしなきゃいけなくなって。面倒だけど選ばれちゃったからしょうがないよね」 「そうなのか。余興って一体何を……」 「わかんない。とにかく私は行くね。じゃ!」  そう言ったきり、兄は急ぎ足でその場を離れてしまった。やけに急いでいたが、そんなに時間がないんだろうか。もう少しゆっくり話したかったのに。  ――まあ余興が終わってからまた話せばいいか。  そう思い直し、アクセルもパーティー会場に向かった。  ……というか、同じパーティー会場に行くなら一緒に行けばよかったな。  とりあえず、バルドル様を捜そう……と思い、アクセルはパーティー会場を見て回った。  大勢の神が集まっている場所があったので、そこを覗いたらすぐに見つかった。バルドルは神々の間でも人気者らしく、たくさんの神に囲まれて楽しそうに会話していた。 「バルドル様!」  アクセルは一生懸命神々を掻き分け、バルドルに近付くべく声を張り上げた。 「……おや? きみかい? どうかしたの?」 「ちょっとお話があるんですけど、今よろしいですか?」 「後にしろ。この通り、兄上は忙しいんだ」  と、側にいたホズが口を挟んでくる。楽しい会話を邪魔されて、少々不機嫌なようだ。  心の中で「すみません……」と謝りつつも、アクセルは頑として言った。 「大事な用なんです。俺の生死に関わる問題なので」 「そうなの? 一体どういうこと?」 「実は……」  アクセルは兄から聞いた話をそのままバルドルに伝えた。一刻も早く神器が必要なのだということを特に強調して話した。  聞き終えたバルドルは「なるほど」と納得した後、笑顔でこう言ってくれた。 「じゃあ、倉庫から例のヤドリギを持ってっていいよ。きみにあげる」 「……えっ? いや、そんなあっさり……。いいんですか?」

ともだちにシェアしよう!