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第437話
「いいよ。私が持っていても使い道はないもの。何かしらの神器を持っていないと、エインヘリヤルは破魂されちゃうんでしょ? あれも一応神器だから、お守りくらいにはなるはずだよ」
「バルドル様……」
「今はゲートもオープンになっていることだし、屋敷までは一人で帰れるよね。私はここにいるから、今からそれを持っておいで」
「……はい! ありがとうございます!」
アクセルは深々と頭を下げ、喜び勇んで会場を離れた。
早速世界樹 のゲートから屋敷に戻ろうとしたら、そこで意外な人物に出くわした。
「あれ、兄上……?」
兄・フレインが世界樹をぼんやりと見上げている。どこか寂しそうな横顔をしているが、一体どうしたんだろう。
「兄上!」
アクセルは兄に駆け寄って話しかけた。
「こんなところで何をしているんだ? もう余興は終わったのか?」
「……えっ? お前……」
「ああ、そうだ。さっきバルドル様に話をしたらヤドリギを持って行っていいって言ってくれたんだ。兄上、もしやることがないなら一緒に……」
次の瞬間、兄は素早く自分の背後に回り込み、愛刀を抜いて喉に当ててきた。冷たい切っ先が頸動脈に触れ、さすがに背筋がひやりとした。
「あ、兄上……一体何を……」
「今から私の質問に答えなさい。正直に答えないと首を刎ねるよ」
「は、はい……」
全くわけがわからなかったが、兄の迫力に圧されて頷くしかなかった。悪ふざけをしている様子はなかった。
淡々とした口調で、兄が尋ねてくる。
「お前はアクセルだよね?」
「そうだよ……それ以外の何に見えるんだ?」
「では何故ここにいる? お前は人質に出ていたはずだろう?」
「いや、今日はヴァルハラでパーティーが開かれるって言うから……ゲートが開いている間は自由に行き来していいってバルドル様が仰って……。兄上に会いたかったんで、俺も一緒にここまで来たんだ……」
「ふーん……? ところで、お前が飼っていたうさぎのピーちゃんは今どこにいる?」
「えっ……?」
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