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第440話

 心底そう思いつつ、アクセルは片っ端から扉を見て回った。  何かしらの印が出ていればわかりやすかったのだが、世界樹の扉はそこまで親切ではないようで、向こうの世界を覗いてみないとどこに繋がっているのか判断できなかった。  ――バルドル様の屋敷ってどこだよ……。  急いで戻らなければならないのに、帰り道がわからないと余計に焦ってしまう。  冷や汗をかきそうになっていると、 「落ち着くんだよ」  兄がぐっ……と腕を握ってきた。力がこもっていて痛いくらいだった。  それでかえって目が覚めた。 「うーん、ここかなぁ」  兄が何気なくとある扉を開ける。  すると、その先に馴染みのある景色が見えてきた。何もない平野の先に、一軒の城がぽつんと建っている。バルドルと生活している屋敷だ。 「あっ、ここだ……」 「おや、当たりかい? じゃあ行こうか」  兄に引っ張られ、アクセルは扉の先に踏み込んだ。  そこは今まで生活していた世界に間違いなく、自分が作った赤いポストもしっかり立っていた。 「兄上すごいな。何でわかったんだ?」 「んー、何となく? ただの直感だから理由はないよ」 「そうか……。とにかく助かった」 「どういたしまして。お礼は後でたっぷりとね」 「っ……」  含みのある言い方に、思わず顔が赤くなる。  考えを振り払うようにぶんぶん頭を振り、アクセルは急いでバルドルの屋敷に戻った。  屋敷の入口はいつ戻ってきてもいいように、あらかじめ鍵を開けてある。 「どうせうちには泥棒したくなるようなものなんてないし」  ……と、バルドルが言っていたのだ。  ――そんなわけないだろ!  大事なものがあるじゃないか! 例のヤドリギが! 神器ミストルティンが! バルドル様にとって唯一の弱点が!  バタバタと屋敷に押し入り、地下へ続く階段を駆け下りて、頑丈な倉庫の扉を開く。  扉が全開になるのも待てず、一人分が入れるくらいの隙間が開くやいなや、アクセルは倉庫内に飛び込んだ。  後ろで兄がギギギ……と扉を全開にしてくれたけど、その音も耳に入らなかった。

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