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第444話※
「ほら、お前もこれ投げてみろって」
「これは……何かの種か? しかしいくら万物の加護があると言っても、兄上に何かを投げつけるなんて俺には……」
「大丈夫だって。そんな小さなもの、ぶつけたところでどうにかなるわけないじゃん。みんな武器投げてるし、ちょっとした景気付けだと思ってさ」
「はあ、まあ……それはそうかもしれないが……」
「ほらほら、今がチャンスだぜ。大事な兄貴が不老不死になったんだから、お前もお祝いしてやらなくちゃ」
「……うん、まあそうか……」
躊躇いながらも、ホズはやぶさかではないような顔をしている。おそらく、自分が何の種を渡されたのかわかっていないのだろう。あるいは、ヤドリギがバルドルの弱点だということを知らないのかもしれない。
「ホズ様、待ってください! その種は投げちゃダメです!」
大声で叫んだものの、自分の声も歓声で掻き消されてしまう。ホズまでは届かない。一刻も早く止めなきゃいけないのに、他の神々に阻まれて近づくこともままならなかった。
「ほら、バルドルはあっちだ。さ、景気づけに! ポイッと投げてやれ!」
ロキが更にそそのかしている。
ホズがヤドリギを持った手を振りかぶった。
「ホズ様!」
ヤドリギが投擲された。ただの種だったそれは、ホズの手を離れた瞬間、槍のように鋭い刃に変形した。
鋭い切っ先は真っ直ぐにバルドルの元へ飛んでいき、その柔らかな胸を深々と貫いた。
「ぐっ……!」
バルドルが短い呻き声を上げた。突き刺された衝撃でよろよろと足元がふらつき、ドサッと地面に倒れた。胸元や地面が赤黒い血でじわじわと染め上げられていく。
そのままバルドルは虚空を見つめたまま動かなくなった。
「……え……?」
シン……と会場が静まり返る。熱気を帯びていた神々も、皆一様に倒れたバルドルを見つめていた。何が起こったのかわかっていないみたいだ。
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