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第446話
その時、空気をぶち破るようにロキが叫んだ。
「バルドルの敵は打った! ホズは光の神を殺すという重罪を犯した! よって死者の国 で永劫の責め苦を受けることに……」
「嘘だ!」
我慢できず、アクセルは巨人たちを掻き分けて中央に飛び出した。そしてロキに向かって言い放った。
「俺はずっと見てた! あなたがそそのかしたんだ! 目の見えてないホズ様に! あのヤドリギを渡して! バルドル様に投げつけろって!」
「アクセル、離れなさい!」
遅れて、兄も飛び出してくる。焦ったようにこちらを羽交い締めにし、輪の中に引きずり戻そうとしてきた。
兄が何故止めるのかわからなかったが、ホズの名誉のためにもここで引くわけにはいかないと思った。
「ホズ様は何も知らなかったんだ! ヤドリギがバルドル様の弱点だってことも! 渡されたのがヤドリギの種だってことも! でもあなたは何もかもわかった上でホズ様をそそのかした! バルドル様を殺したのはあなただ!」
「んー……?」
ロキが目を細めてこちらを見た。偽物の兄として一度会っているはずが、彼は完全にすっとぼけてこう言った。
「お前は誰だ? 一体何を言っているんだ? 頭大丈夫か?」
「とぼけるな! 兄上に化けて俺を騙したくせに!」
「何のことだかさっぱりわからないな。ついでだから、お前も一緒に死者の国 に落ちてしまえ」
「えっ……?」
途端、急に足元が崩れた。
地を揺るがす音と共に、バルドルの倒れている場所が地底へと吸い込まれていく。黒いホールが中央にぽっかり空き、バルドルとホズの身体は、そのままそこへ落ちていった。
「うわっ……!」
ちょうど近くにいたアクセルも、強い力でホールに吸い込まれかけた。
ロキはちゃっかり巨人の腕に乗り、我関せずとこちらを眺めている。
闇雲な怒りが湧いてきたが、この状況ではロキに手が届かない。
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