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第448話

「……!」  遠くから戦場の音が聞こえてきた。戦士たちの雄叫びと武器を叩き合わせる音、投石の重い音等が混じり合って、耳まで届いてくる。  何の戦なんだろうと思い、アクセルはそちらまで足を運んだ。どうせ夢だと開き直っていたから、見るべきことは全部見ておこうと思ったのだ。  戦場を覗きに行ったら、覚えのある人たちがたくさん戦っていた。  かつて自分の上司だった小隊長もいたし、隣の家のガチムチお兄さんもいた。皆、生前にお世話になった懐かしいメンツだった。  その中で、一際目を引く人物がいた。  ――あっ、兄上だ……!  白い片マントを翻し、華麗に敵を斬っていく兄。何人もの敵を倒しているのに、白い衣装には一滴の返り血もついていなかった。美しく戦場を舞っている姿に、改めて見惚れてしまった。  ――ああ……やっぱり兄上かっこいい……。  目からハートが出そうだ。遠くから眺めているだけでうっとりする。  いつもはおっとりして、ややすっとぼけているところがあるけれど、さすがに戦場では勇ましい。そのギャップに惚れ直した。 「フレイン、もうこの辺りでいいだろう。先に進むぞ」 「はいはい、了解だよ」  ブン、と太刀を地面に向かって振り、こびりついた血を振り落とす。残った血は紙で拭き取って、鞘にパチンと納めた。  ――兄上と一緒に戦いたかったなぁ……。  今更だが、これに関しては本当に残念だと思う。なんで俺は十一歳も年下なのかと、事あるごとに悔しくなったものだ。  それは今でもちょっと思っている。年齢は追いついたものの、中身はちっとも追いついている気がしない。今でも自分は未熟な弟のままなのだ。兄がいないと肝心な時に何もできない……。  ――というか、ここに兄上がいるってことは、俺は後方で待機してるってことか?  あるいはまだ配備すらされていないか……などと考えていた時、とある人物が兄に近づいていった。

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