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第450話
「戦場での戦死だからエインヘリヤルにはなれるだろう。たまにはオーディンの戦士集めも手伝ってやらないとな」
「……!」
「それにしてもお前、よほど弟が可愛いんだな。ここまで油断してくれるとは思わなかったわ。……なあ、兄上?」
それだけ言い捨てると、ロキは倒れた兄を踏みつけてその場から消えた。
アクセルは、急いで兄に駆け寄ろうとしたが――
「っ!」
そこで目が覚めた。
反射的にガバッと起き上がり、隣を確認する。兄の姿はなかった。
――兄上……!
彼は無事なのか。今どこにいるのか。直前まで兄が斬られた夢を見ていたせいか、不安で不安で仕方がない。
急いで捜しに行こうと立ち上がった時、パサッと大きめの布が地面に落ちた。
ただの掛け布だと思っていたそれは、見覚えのある白いマントだった。
――これ、兄上のマント……?
昔から着用している兄お気に入りのマント。自分も、これが綺麗にはためいているのを見るのが好きだった。
それが身体にかけられていたということは、兄は近くにいるということか。ちょっと離れてすぐに戻ってくるという意思表示か。
――じゃあ、あまりあちこち歩き回らない方がいいのかな……。
力なくその場に腰を下ろす。
兄のことが心配なのは変わりないが、見知った場所でもないし、下手に歩き回ったら行き違いになってしまう可能性もある。
もう少し待ってみて、兄が戻って来なかったら近くを捜しに行ってみよう。
――それにしてもここ、本当に死者の国 なのか……?
改めて周囲を見回してみる。
自分が座っている場所は、直径五メートル以上はありそうな切り株の上だった。切り株と言っても木の根元から一メートルくらい高い場所で切られているので、周囲の様子がよく見える。
そこから周りを観察してみたが、アクセルが想像していた死者の国(ヘル)とまるで違った。
死者の国 と言ったらもっとこう――髑髏が山積みになっているとか、暗くて何も見えないとか、マグマが煮え滾っているとか、そういう不気味な場所だと思っていたのに、実際は巨大な木が何本も生えている森のような場所だった。
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