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第452話
兄はいつものようににこりと微笑み、こちらに武器を渡してきた。
「はい、お前の武器。あとこれ――ヤドリギもね、バルドル様に借りたやつ」
「え……」
二刀小太刀と一緒にヤドリギも渡され、さすがに躊躇してしまった。
「兄上……このヤドリギ、俺が持つのはちょっと」
「なんで? バルドル様から借りたのはお前でしょ?」
「そうだけど……俺のせいで、バルドル様は……。俺が余計なことを喋らなければ、バルドル様もホズ様も、あんなことには……」
考えれば考えるほど、自分の軽率さに怖気が走る。
自分が愚かだったせいで、ずっと世話になっていた恩人たちを死に追いやってしまった。自分が未熟だったせいで、恩人たちの死を止められなかった。自分が非力だったせいで、恩人たちの敵すら討てなかった。自分のせいで……。
「お前のせいじゃないよ……と言っても、お前はなかなか納得できないんだろうね」
と、兄が言う。
「でもね……ロキのことだから、お前から情報を聞き出せなかった場合は、別の人から情報を聞き出したと思うよ。彼は最初からバルドル様を狙ってたみたいだから。あのパーティーに参加した時点で、バルドル様の死亡フラグは確定していたんだよ」
「そんな……」
「だから、あまり自分のせいだって考えない方がいいと思う。もしどうしても気が収まらないなら、バルドル様に会った時に直接謝ればいい」
「会った時って……バルドル様は、もう……」
視線を落としたら、兄はガシッとこちらの頭を掴んできた。そして強制的に顔を上げさせ、ぐるりと周りの景色を見せてきた。
「忘れたの? ここは死者の国 なんだよ? 死んだ人に会える唯一の世界なんだ。バルドル様に会うことも不可能じゃない」
「えっ……?」
「ほら、そろそろ行くよ。私たちは生きたままここに来ちゃったから、あまり長くはいられない。早く地上に戻らないと……ラグナロクも始まってしまう」
兄が腰を上げ、切り株から下りる。アクセルも急いでその後に続いた。
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