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第459話
「時間ないって言ったでしょ。私たちは生きたまま死者の国 に来ちゃったんだ、早くここを出ないと本当に死んじゃう」
「……? 兄上、それはどういう……」
戸惑っているアクセルを引っ張り、兄はずんずん声がした方へ歩いて行く。
比較的瑞々しい木の向こうに、バルドルとホズがいた。木の幹に寄り掛かりながら、熱い抱擁を交わしている。よく見れば、バルドルの手はホズの服の中に突っ込まれており、その中でもぞもぞ動いていた。多分、素肌を直接弄っているのだろう。
見てはいけないものを見てしまい、アクセルは一生懸命目を背けた。
慌てて兄を引っ張ってその場から立ち去ろうとしたのだが、
「お取込み中、失礼しますよ」
兄は堂々と二人に声をかけてしまう。
さすがのバルドルも顔を上げ、こちらを見た。
「おや? きみたちは……。いつの間にそこにいたんだい?」
「す、すみません……! 決して覗き見ていたわけでは」
「……またお前か。俺たちを覗き見るのが余程好きらしいな。お前は覗き魔か」
「そっ……!」
ホズにも冷たい目で見られてしまう。
覗き魔という残念なレッテルを貼られ、アクセルは泡を食った。
慌てて弁明しようとしたら、兄が半歩前に出た。そしてバルドルに丁寧に頭を下げた。
「初めまして、バルドル様。アクセルの兄・フレインと申します。人質交換の際は、弟が大変お世話になりました」
「ああ、きみがアクセルのお兄さんなのか。いつも彼が自慢していたよ」
「恐れ入ります。ところで、弟がどうしてもバルドル様とお話したいと言いまして」
「私と? 何の用だろう?」
身だしなみを整え、バルドルがすっ……と立ち上がる。
改めて対面すると、だんだん緊張してきた。
「あの……」
アクセルは腰に差していたヤドリギ――ミストルティンを両手で持ち、頭を下げながらバルドルに差し出した。
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