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第460話

「これ、お返しします……」 「おや、これはあのヤドリギか」 「はい……。ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした……」  申し訳なさすぎて、顔を上げることもできない。自分がロキに余計なことを喋らなければ、こんなことにはならなかった。  例えロキが最初からバルドルを狙っていたとしても、自分がその片棒を担いでしまったことが、本当に情けなくて悔しくてたまらない。  バルドルは今どんな顔をしているだろう。何を言われるだろう。  どんな非難でも甘んじて受け入れよう……と覚悟していたら、バルドルは差し出したヤドリギをこちらに押し返してきた。そして言った。 「これはきみのものだよ」 「えっ……?」 「このヤドリギはきみにあげたものだ。それをロキが勝手に持ち出して使った。悪いのはロキだから、きみは何も気にすることはないよ」 「でも……! 元はと言えば俺のせいでバルドル様も、ホズ様も……」 「そうだな。全部お前のせいにしたいくらいだ」  と、ホズが口を挟んでくる。眉を顰め、口角を下げ、非常に苦々しい顔をしていた。 「……だが俺も同罪だ。いや、お前よりもっとひどい。そそのかされたとはいえ、直接兄上を手にかけたのは俺なのだから。死者の国(ヘル)に落ちても、この罪は消えない。俺の命で償っても足りない……」 「…………」 「だが、それでも兄上は俺を許してくださった。それどころか、『これでよかったのかもしれないよ』などと仰って……」 「よくよく考えたら、この状況って全然悪いものじゃないからね」  バルドルがホズの背後から彼を抱き締めた。そして微笑みながら、言った。 「地上ではずーっと離れ離れで、数ヶ月に一度しか会うことができなかった。ホズの目もほとんど見えてなくて、不自由することもあったと思う。でも、ここでは何もかも自由だ。ずっとホズと一緒にいられるし、彼の目も元通りになった。地上では叶わなかったことが全部できるんだ。これってとても素晴らしいことだろう?」

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