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第464話
「しかし、何故兄上ばかり……。俺だって同じタイミングで死者の国 に来たのに」
あまりに腑に落ちず、呟くように疑問を口にしたら、兄が耳元で回答してくれた。
「……タイミングは同じだったけど、私はお前よりちょっと深いところに落とされてしまって。自力でお前のところまで上がって来たんだよね……」
「えっ……? そうなのか?」
「うん……。深いところは空気が悪いからね……ちょっと、瘴気を吸いすぎたみたい……ごほっ、ごほっ!」
「あああ、もういい! 説明は全部後でいいから……! とにかく早く出よう!」
苦しげに咳き込む音を聞いて、慌てて歩くスピードを速める。疑問は尽きないが、細かいことを考えるより今は兄を助ける方が先だ。
辺り一面、緑色の樹木になってきた。ヴァルハラの森とあまり変わらないくらいの景色になってきた。出口はすぐそこのはずだ。
――しかし、出口ってどういう感じになってるんだろう……?
森の中に隠れてたら面倒だな……と思っていると、
「……他のゲートみたいに淡く光っているはずだよ……。それは世界樹 に共通してることだから……」
兄がそっと情報を与えてくれた。
「ありがとう兄上、助かった」
ヴァルハラに帰って、兄が元気になったらちゃんとこの世界のことについて勉強しておこう……うん。
そう密かに誓いながら、光っているゲートを探した。
薄暗い森なので、どこかが光っていればすぐにわかるはず。アクセルは一生懸命目を凝らし、周囲を探索した。
そのまま歩いていると、青々とした葉の隙間からほのかに白い光が漏れているのが見えてきた。
――あれか……!
よかった、やっと見つかった。これで兄と一緒に地上に帰れる。
そう思って出口付近まで歩いて行った。
その時だった。
「あら、挨拶もなしにここを出て行く気?」
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