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第471話
「……はあ、なんかあんたと話してると脱力するわ。戦士のくせに能天気すぎない?」
「え。そ、そうだろうか……。俺はごく普通のつもりだが」
「それでごく普通だとしたら、今まで余程恵まれた環境にいたのね。さぞ周りの人に可愛がられて育ったんでしょう」
そう言えば、人質に行く前も兄に「お前の危機管理能力はどうなってるんだ」と寝込みを襲われた覚えがある。
自分はそこまで能天気のつもりはない(というか、兄の方が普段は余程能天気だと思う)のだが、世間知らずだったり思慮が浅かったりと、そこそこ危なっかしいところはあると自覚している。
それが能天気だと言われてしまえば、アクセルとしては何も言えないのだが。
すると、代わりに兄が口を開いた。
「でも、それが弟のいいところなんです。だからこの通り、素直で優しい子に育ちました。女王様にも弟のよさがおわかりいただけましたか?」
「えっ? 女王……?」
「……そうね、奇跡的な仕上がりだってことは認めておくわ。エインヘリヤルは、どいつもこいつも血の気の多いやつばかりだと思ってたけど」
「ちょっと待ってくれ。女王様って、まさかきみ……死者の国 の女王なのか?」
さすがに意外でそう聞き返したら、彼女がますます呆れた顔になった。
「……今頃気付いたの? 別にいいけど、ちょっと遅すぎない?」
「す、すまない……本当に知らなくて……。これまでの無礼の数々、謹んでお詫び申し上げます」
「いいって。急にかしこまられても調子狂うし」
と、彼女が前髪をいじる。
「……それに、あんたと話しててもそれほど悪い気分にならない。他のヤツだったらぶっ飛ばしてるところだけどね。……どうしてかしら」
「それはわからないが……。とにかく、いろいろ申し訳なかった」
「そうね、じゃあ腹いせにちょっと面倒な試練でも出しちゃおうかしら」
「……え」
「冗談よ」
ニヤリと笑ってくるヘル。まったく、心臓に悪い女王様だ。
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