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第473話

 ――でも俺、全然体調悪くないし……。  彼女が瘴気を出していたことにも全く気づかなかった。  死者の国の女王様だから出していてもおかしくなさそうだが、あんなに近くで会話していたのに全く体調が変わらないのも不思議な話だ。  初めて来た人は、あまり瘴気の影響を受けないんだろうか。それとも単に自分が鈍感なだけだろうか。よくわからない……。 「ところで、お前は自分で神器を使ったことは一度もないよね?」  と、兄が話しかけてくる。口元を白いマントで覆っているせいか、やや声がこもっていた。 「地上に戻ったらすぐにラグナロクが始まるかもしれない。今のうちにある程度使い方を学んでおいた方がいいよ。瘴気の石を壊す時に使ってみるといい」 「あ、ああ……それもそうだな。……しかし、瘴気の石を壊す時というのは?」 「瘴気の石は大きいんだ。まあ、見てみればわかるさ」 「そうなのか……」  漬物石くらいの大きさなのかな、とぼんやり想像しつつ、アクセルは兄と並んで歩き回った。  自分は瘴気を感知することができないので、兄が進む方向に一緒についていった。体調が万全でないのに、瘴気の石まで探させてしまって申し訳ない。 「おっと、一個発見」  兄がやや黒みがかった岩に近づいていく。周辺には砕けた小石らしきものがたくさん散らばっていた。漬物石レベルの石はないようだが……。 「じゃ、さっさと破壊しちゃおうかな」  と、兄が岩に向かって武器を構えようとする。  本気で岩を斬ろうとするので、アクセルはびっくりして聞き返した。 「ちょっと待ってくれ。まさかこれがそうなのか?」 「そうだよ。大きいって言ったでしょ?」 「言ったけど……でもこれは、石というレベルではないような……」 「まあその表現はやや語弊があるよね。瘴気の岩と言った方がいいかもしれない。これを破壊するのはそれなりに大変そうだ」 「……大変だよな、絶対」  というか、二人がかりで打撃を加えたところで、本当に破壊できるかどうか。

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