474 / 2296

第474話

 この瘴気を出す岩とやらは、アクセルの背丈とほぼ同じくらいである。漬物石くらいの大きさなら上手いことヒビを入れて叩き壊せばいいと思っていたのに、これではどこからヒビを入れればいいかわからない。  ――俺一人じゃ、いつまで経っても破壊できなかったかも……。  兄には休んでいて欲しかったけれど、そんな余裕はなかったようだ。本当に申し訳ないが、早く地上に戻るには兄にも頑張ってもらうしかない。 「……しかしこれ、どこから手をつければいいんだ?」 「やっぱりてっぺんに楔を打ち込んで、そこから真っ二つに割っていくのが定石だと思うよ」  と、兄が腰からサバイバルナイフを引き抜く。愛用の太刀の他に、予備として常にナイフを持ち歩いているのだ。山で狩りをする時にも使える優れ物である。 「とりあえず、これを楔代わりに打ち込んで少しずつ叩き割っていこう。それを繰り返していけば、いつかは破壊できるはずだ」 「は、はあ……。そりゃ理論上はそうなるだろうが、いつかはってところが曖昧だな。そもそも、どの程度細かくしたら『破壊した』ってみなされるんだ?」 「それはわからないけど。でもごちゃごちゃ言ってるより、少しでも手を動かした方がいいんじゃない? 早く戻らないとどんどん状況が悪くなりそうだし」 「それもそうか……。じゃあ、楔は俺が」  兄からサバイバルナイフを受け取り、岩のてっぺんによじ登る。  瘴気を出しているものに直接触れたら、さすがにちょっとめまいがしてきた。確かに、あまり時間をかけているとこちらが倒れてしまいそうだ。  アクセルは両手でナイフを握り、思いっきり振りかぶって岩の中心に振り下ろした。意外と柔らかい性質の岩だったようで、二、三度繰り返したらグサッと刃が中ほどまで食い込んだ。あまり刃こぼれしなくてよかった。  食い込んだナイフを真上から更に奥まで差し込み、柄までしっかり食い込ませる。後はハンマー代わりの石か何かがあればいいのだが。

ともだちにシェアしよう!