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第475話
「ところで、兄上はどんな神器を授かったんだ?」
柄まで食い込んだナイフを思いっきり引き抜き、その隣に再び突き刺しながら聞いてみる。
すると、兄はポケットから小さく折り畳まれた何かを取り出した。紙のようにも見えるが、果たして……?
「私はこれ。なんか聞いた話では戦闘に使える武器じゃないみたいなんだよね」
「……え? 武器じゃないのか? というか、それは一体何なんだ?」
「これはスキーズブラズニル、伸縮自在の魔法の船だよ」
「魔法の船……」
「……の、レプリカ」
「レプリカなのか。それって意味あるのか?」
「レプリカでも、本物と同じ効果はあるよ。でなきゃ私たちに与える意味がないからね。……でも、どうせなら戦える神器がよかったなぁ……」
よりにもよって、何でこれになっちゃったんだろう……と、ぼやいている兄。
――魔法の船なんて、戦闘においては何の使い道もなさそうだよな……。
というか、伸縮自在なんて言っているが、折り畳まれた状態ではただの紙にしか見えない。あれで本当に船になるのかは甚だ疑問だ。
それに、レプリカというところも気になる。自分はバルドルから本物のヤドリギ――ミストルティンをもらった身だから、神器選考会で渡される神器がまさかレプリカだとは思わなかった。
「どうせ与えられるなら、ミョルニルのレプリカがよかったなぁ……。あれなら一発で岩を破壊できるのに」
と、兄が更にぼやいてくるので、アクセルは重ねて尋ねた。
「兄上、俺たちに与えられる神器はレプリカが普通なのか?」
「そうだよ。オリジナルは神の持ち物だからね。ミョルニルはトール様の武器だし、この魔法の船はフレイ様のものだし」
「フレ……兄上みたいな名前の神様だな」
「それは私も紛らわしいと思った。まあ、『フレイ』はあくまで俗称らしいけどね」
「俗称……なのか」
「そう。フレイって『主』って意味だから。本名はユン……ユン……何だっけ?」
「……いや、知らないけど」
まあ、魔法の船――スキーズブラズニルの名前を正確に覚えていただけでも、かなり頑張った方なのではなかろうか。
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