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第478話

 妖しい考えを振り払うように、アクセルは黙々と岩にヒビを入れ続けた。  岩のてっぺんから縦に一メートルくらいヒビが入ったところで、ようやく岩全体がグラグラしてきた。ヒビ割れを無理矢理こじ開けるようにナイフを差し込み、左右に大きく力を入れる。  やがてメキメキという音がして、岩が縦にパッカーンと割れた。清々しいほど綺麗に真っ二つになった。これでようやく半分だ。 「なあ兄上……これ、何分割すればいいと思う?」  少し息を整えながら、兄に聞いてみる。  すると兄も困ったような目でこちらを見てきた。 「うーん……どうだろう。女王様は破壊しろとしか言わなかったからね。二つに割っただけじゃさすがに『破壊』とは言えない気もするし」 「だよな……。しかし、このやり方だとあまりに効率が悪いぞ……。何かもっといい方法はないのか……?」 「普通、こういう力仕事って道具を全部用意してからやるんだよね。そういう意味ではこの状況、丸腰のまま大物を狩ろうとするくらい無茶だと思う」 「……しかし、今更女王様に『道具を貸してください』とも言えないしな。俺たちが持っている道具でどうにかするしかないんだが……」  と、アクセルは一度岩から離れて手持ちの道具や武器を全部出してみた。兄も同様に持ち物を全部出してくれた。  ――と言っても、俺たちの持ち物なんてたかが知れてるんだが……。  着ている衣服以外は、いつもの武器か授かった神器くらいしかない。  パーティーの途中で不意に死者の国(ヘル)に落ちてしまったため、緊急食料すら持っていなかった。あれから何時間経ったのかわからないが、さすがに腹が減ってきた。 「さすがに、このヤドリギは食べられないだろうしな……」 「お前、そんなにお腹空いてるの? さすがに神器を食べちゃダメでしょ」 「わかってるよ。植物の種だから、枝が生えてついでに果物でも……と思っただけだ」

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