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第479話

 言ってしまった後で、自分でもかなりくだらないことを言ったと反省した。いくらヤドリギの種だからって、そこからニョキニョキ果物が生えてくるわけがないではないか。  腹が減っていると思考もおかしくなるのかな……と頭をトントン叩き、次の作業に移ろうとした時、ある考えが閃いた。 「あ、もしかして……」 「それ使えるんじゃない?」  そう言ったのは、ほぼ二人同時だった。  アクセルは兄と顔を見合わせ、並べたヤドリギを手に取った。 「岩にヤドリギが入るくらいの穴を開けて、この種を入れて……」 「中で変形させたら、内側からバラバラになるかもしれないね」  考えていることも一緒だった。内側から破壊することができれば、外からナイフを細かく刺していくより、ずっと効率がいい。  ――バルドル様を刺し殺せるくらいの剣にも変形するんだし。  強度に関しては問題ないと思う。神器がそんじょそこらの岩に負けるはずがない。  ただ、どうやって変形させるのかは謎だ。バルドルからこの神器を授かって以来、自分では一度も使ったことがないし、どう使えばいいかもわかっていないのだ。  振り回しているだけで剣の形になるとも思えないし……。 「じゃ、早速こっちの岩で確かめてみようか」  と、兄が割れた岩の真ん中に、ナイフで切れ込みを入れていく。直径二センチ、深さ十センチくらいの穴を掘り、こちらに視線を送ってくる。 「できたよ。さあ、どうぞ」 「あ、ああ……」  流されるまま、アクセルは穴の中にヤドリギを突っ込んだ。  ……で、この後どうすればいいのだろう。  チラチラ兄を見ていたら、兄は小首をかしげて言った。 「どうしたの?」 「すまない、兄上……。俺、ヤドリギの使い方わからないんだ」 「ええ? 嘘でしょ? バルドル様から教わったんじゃないの?」 「いや、全然……。もともと俺が使うことになるなんて思ってなかったし、そんな機会もなかったから……」

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