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第481話

「…………」  しかし、一体どうすればいいのだろう。  ――投げるとか叩くとか、そういう刺激を加えないと変形しないのかな……。  試しにヤドリギが埋まっている周辺の岩をガンガン叩いてみたが、特に反応はない。 「……お前、何してるの?」 「刺激を加えたら変形するかもしれないと……」 「いや、それはないでしょ……。刺激を加えただけで勝手に変形しちゃったら、気軽に持ち運べないじゃない」 「あ、それもそうか……」 「もうちょっとまともな方法考えてくれる? お前、頭は悪くないのに、さっきから残念なことばかりしてるよ」 「はいはい……悪かったな、残念な弟で」  少し苦笑し、アクセルは別の方法を考えてみた。  ――と言っても、ホズ様は本当にポイッと投げていただけだったんだけどな……。  それ以外に変わったところはなかった。バルドルに種を投げた瞬間、ヤドリギはミストルティンに変形したのだ。あの時は惨劇を止めるのに必死だったから、見落としたとは思えない。  だとしたら、目に見えないものが関係していた可能性が高いが……目に見えないものとは一体……? 「ねえ、何か考えついた? お兄ちゃん手持ち無沙汰なんだけど」  と、再び兄が口を挟んでくる。 「もうさっきの原始的な方法に戻す? 手を動かした方が早くない? このままじゃ時間だけが無駄になって……」 「わかったから、ちょっと黙っててくれ」  さすがにイラッとしてそう言い返したら、いきなり岩にピシッとヒビが入った。  えっ、と思ってヤドリギを突っ込んだ穴を見た途端、鋭利な枝が岩肌を突き破ってこちらに伸びてきた。 「おわっ!」  危うくつつかれそうになり、慌てて身を引く。  飛び退いて様子を見守っていると、岩から生えてきた枝は四方八方にニョキニョキ伸び、岩全体にまとわりついた。  枝に締め付けられた岩はミシミシ音を立て、やがてメロンのように全面にヒビが入り、その後バキバキに砕け散った。

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