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第482話

「…………」  仕事を終えたと言わんばかりに、枝はシュルシュル縮んで芽に戻っていく。  アクセルはそっと芽になったヤドリギに近づき、少しかがんで砕けた岩を眺めた。岩というより、細かく粉砕された砂状態だった。 「……なんかすごいね」 「そ、そうだな……」  兄も少し度肝を抜かされたみたいだ。アクセルも、まさかここまで粉々にしてくれるとは思っていなかった。 「でも、こんなに破壊できるなら女王様も文句言わないんじゃないかな。じゃあ、こっちの岩にも穴開けちゃうから、お前はヤドリギで破壊してね」 「あ、う……うん……」  とりあえず頷いてみせたが、また同じことができるかは正直自信がなかった。  ――さっきのだって、なんでいきなり反応したのかわからないし……。  兄と話をしていたら、急にヤドリギが枝を伸ばしてきたのだ。それまではうんともすんとも言わなかったヤドリギが、唐突に変形し始めたのだ。  というか、会話なら今までもずっとしてきたのに、何故このタイミングで変形したのかさっぱりわからない。単純な会話だけで反応するとも思えないし。  ――だからって、変な会話をしたつもりもないけど……。  アクセルは顎に手を当てて考え込んだ。  もし会話で反応したのだとしたら、今までとは違う何かがあったということだ。その「何か」に反応してヤドリギは枝を伸ばしたのだ。  ではその「何か」とは何だろう。  普段との違いなんて、死者の国(ヘル)にいることと、岩を破壊しなきゃいけないこと、それに兄にちょっとイラッとしたくらいだけど……。  ――って、まさか……。  ある考えに辿りつき、アクセルはハッと息を呑んだ。  兄の方に目をやったら、彼はもう半分の岩にせっせとナイフを打ち込んでいた。粉々に破壊できる目途が立ったせいか、先程より元気が出てきたみたいだった。

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