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第487話
「よくお似合いですね、女王様」
と、兄がにこやかに褒め称える。
「帰り際にそのようなお姿を拝見できて、私たちはとても運がいい」
「ふ……あんたの台詞はどこまでが本当なのかわかりづらいわ。まあでも、そう言われて悪い気はしないわね」
次いで、ヘルはこちらに向き直ってきた。
「それで? あんたは何か言う事ないわけ?」
「えっ? あ、ええと……すごく綺麗だと思う……びっくりした」
「びっくりってどういうことよ。私にはこんな衣装似合わないって?」
「いや、違う! その逆だ! いい意味でギャップを感じたというか……綺麗だと思ったんだ、本当に」
「綺麗って……」
戸惑っている彼女に、アクセルは早口に言う。
「その長い布、身体の線が出ないから誰でも着られるけど、実は本当にスタイルのいい人じゃないと似合わないだろ? 巻き方も上手だし、色味もあなたに合っている。俺はファッションのことはよくわからないが、あなたなら他の衣装も似合うんじゃないか?」
「…………」
「あ、すまない……冷静に分析してしまって。でも本当に素敵だと思ったんだ。決してお世辞とかじゃなく……」
「……もういいわよ。あんたと話してるとホント調子狂うわ……」
「す、すまない……」
「というか、あんたは逆に着替えた方がいいくらいね。胸元がビリビリじゃないの」
「え。ああ、これか……」
ヤドリギに破かれた服に目をやる。
男だから恥ずかしくはないが、そう言われると早く着替えたいなという気がしないでもない。
「まあいいわ。瘴気の石を破壊してきたのは知ってるし。思った以上に粉々にしてくれたみたいだから、今回はそれで合格にしてあげる」
「あ、ありがとう……」
追加試練を出されたらヤバかったが、一発OKだったので少しホッとした。
これでようやく地上に戻れる。
「もう二度とこっちに来るんじゃないわよ?」
出口を通ろうとした時、ヘルが優しい釘を刺してきた。
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