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第488話
「今度はこんなすぐには帰れないからね。瘴気も濃くなるし、試練も厳しくなる。……せいぜい、ラグナロクを生き延びることね」
「わかった、ありがとう。心得ておくよ」
「ま、本当に死んじゃったらこっちの住人になるわけだけど。その時は覚悟しなさい。存分にいじめてあげるから」
そんなことを言ってくるので、アクセルも冗談めかして答えた。
「えー、それは困るな。じゃあ、何があっても死なないようにしなきゃ」
「ふふ、あんたがどこまで生き延びられるか、死者の国 から見ていてあげるわね」
「ありがとう。女王様が見守ってくれるなら心強いよ」
「心強いってね……あたしに見張られるってのは、死神に憑りつかれるようなものなのよ? わかってるの?」
「だからいいんじゃないか。死神が側にいてくれれば、『死』が取り入る隙もなくなるだろうしな」
そう言ったら、彼女は呆れたように目を逸らした。そして呟いた。
「あんたと話してると、本当に調子狂うわ……」
「えっ?」
「いいからもう早く行きなさい。でないと引き留めちゃうわよ」
「あ、ああ……。お世話になりました」
アクセルは急いで頭を下げると、兄と一緒にゲートをくぐった。
短いゲートを抜けると、そこは世界樹 の前だった。よく他の世界へのゲートが現れる木の根本だ。
「はあぁ……やっと戻って来られた」
と、兄が深呼吸をする。
「それにしてもお前、女王様を口説くなんて結構やるね。いつの間にそんなテクニック覚えたの?」
「くどっ……!? いや、そんな……俺は決して口説いていたわけでは」
「え、わざとじゃないんだ? じゃあ自然と口説いてたんだね。ますますやるなぁ」
「違うから! 俺は普通にコミュニケーションしていただけで、相手をどうこうするつもりは全くなかったんだ!」
「ふーん、そう? お兄ちゃんはかまわないよ? 少しくらいなら女王様とデートしても」
「しないよ!」
自分が好きなのは兄だけなのに、浮気をそそのかすようなことを言わないで欲しい。
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