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第489話

「それにしても、地上はやっぱり違うね。空気が美味しいな」  清々しい顔をしている兄を見て、アクセルは聞き返した。 「で……兄上、具合はどうなんだ? 言うほど悪くなさそうだが」 「うん……言うほど悪くはない。でも元気満々と言えるほどじゃないかな。まだ瘴気が残ってるのか、うっすら気持ち悪いし、ダルい気もする」 「そうか……。じゃあ少し休憩した方がよさそうだな」 「いや、大丈夫。いざとなったらまたお前におんぶしてもらうよ」 「……。まあそれはいいとして、ここはどこなんだろう」  アクセルはぐるりと周囲を見回した。  パッと見たところ、ヴァルハラとは少し違う。遠くに緑豊かな山が見えるが、その手前には明らかに誰かがいそうな建物も見えた。ただし、一般的な住宅ではなく、神殿のような特別な建物だったけれど。 「あそこ、誰かいるのかな。行ってみる?」 「いるとは思うが……何が出てくるかわからないぞ?」 「そうだけど、ここに突っ立ってても何も進まないじゃない」 「それは、そうだが……」 「とりあえず、ちょっと様子を見に行ってみない? またゲートが開けばいいけど、しばらく開きそうにないし。お前の着替え、借りられるかもよ?」 「え、ちょっ……! ちょっと待ってくれ兄上!」  スタスタと神殿に歩いて行ってしまう兄を、慌てて追いかける。  確かに偵察は必要かもしれないが、むやみやたらと歩き回るのは危険ではないのか。  ――俺のこと「能天気」なんていうけど、兄上だって相当だぞ……。  心の中でボヤきつつ、周りに注意しながらついていく。  神殿の前までは特に誰かに遭遇することもなく、スムーズに辿り着くことができた。それが逆に不気味だった。  ここは一体どういう世界なんだ? 誰が住んでいるんだ……? 「兄上、ここは……」  どこなんだ、と言おうとしたら、兄に「しっ……!」と口を塞がれて神殿の柱に押し付けられた。  何事かと思い、身体に緊張が走った次の瞬間、ズシン……ズシン……と地響きのような足音が聞こえてきた。

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