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第490話
音の方に視線を送ったら、そこには見上げんばかりの巨人がいた。こちらには全く目もくれず、足音を立てながら悠々と神殿に入っていく。
――ヴァルハラにいたのと似ている……?
同じ個体かはわからないが、少なくとも同じ種族であることは窺える。
アクセルの身長の五倍以上はあり、全身が岩のような硬質な身体でできていた。下手に近くを歩いたら、一瞬で踏み潰されてしまいそうだ。そう言えば、ヴァルハラに帰ってすぐ、あんな感じの巨人に吹っ飛ばされたことを思い出す。
巨人が神殿に消えたのを見届けてから、兄は手を放してくれた。
「……行ったね。気付かれなくてよかった」
「あ、ああ……。しかし、気付かれたところで何もされない気もするが……」
「温厚な巨人ならね。でも血の気の多い巨人だったら、問答無用で踏み潰される可能性がある。神殿みたいな神聖な場所に、どこの誰だかわからないヤツが忍び込んでるわけだしね……。見つからないのが一番だ」
だったら最初から神殿に近づかない方がよかったんじゃ……と、心の中でツッコむ。
――まあ、巨人相手なら気をつけていれば見つかることもなさそうだが……。
巨人は足音も大きいし、図体がデカいので遠くからでもよく見える。万が一近づいてしまったとしても、目立ったことをしなければ気付かれずに済むだろう。
「……というか、やはりここは巨人の国なのか?」
声を潜めて話しかけると、兄はしたり顔で頷いた。
「そうみたい。もしかしたらロキの出身国かもしれないね」
「ロキの……!?」
「ロキはもともと巨人族だからさ。それが、オーディン様と義兄弟の契りを交わして、神の仲間入りをしたにすぎない。……って、前に教えなかったっけ?」
「……教わったかも。だとしたら、ここにロキがいる可能性もあるのか」
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