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第495話
気持ちを切り替え、アクセルは兄と共に神殿を探索することにした。
できれば早めに仮の衣装が欲しかったが、初めて来る場所なのでどこがどこだかさっぱりだった。周りは似たような石柱ばかりだし、何を目印にすればいいかもわからない。
「……うおっ、と」
巨人と遭遇しそうになり、慌てて近くの石柱に隠れた。
巨人に見つからないようにするのも、それなりに神経が磨り減る。空腹で糖分も足りなくなり、徐々に集中力がなくなってきた。衣装もそうだけど食べ物が欲しい……と思ってしまう。
――ていうか、神殿に食べ物や衣装なんてなさそうだよな……。
そろそろ別の場所に行った方がいいんじゃないか。兄だってあれから何も食べていないのだ。それなりに腹が減っているんじゃないか。
そう思い、兄に声をかけようとした時、
「お久しぶりですね」
「っ……!」
いきなり背後から話しかけられ、驚いて飛び上がりそうになった。思わず肩がびくっと震えた。
振り返って正体を確認したら、そこには意外な人物が立っていた。
「……ロシェ? ロシェなのか?」
「ええ、そうです」
見た目は人畜無害な優男。でも実はいろんな事を企んでいるくせ者。
以前ヴァルハラで、アクセルを罠にかけた人物がそこにいた。最終的に悪事が露呈してどこかに連行されていったところまでは知っているが、その後どうなったかは不明だった。
それがまさか、こんなところで会うことになるとは……。
「で、あなた達はここで何をしているんですか?」
「それはこっちの台詞だよ……。何故きみがここに」
「何故って、ここは僕の故郷ですよ? ラグナロクが始まりかけて世界が混乱しているので、どさくさに紛れて戻ってきたんです」
「えっ……?」
故郷? それってどういうことだ? ロシェはヴァルハラ出身じゃないのか?
ますます困惑していると、兄が納得したように顎に手を当てた。そして言った。
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