496 / 2296

第496話

「なるほどね……。道理で、私たちとは違っているはずだ。毒の扱いとか罠の仕掛け方とか、そっちばかり得意で、戦闘力に関しては何故かたいしたことなかったし。そんな人たちが、オーディン様の眷属(エインヘリヤル)として選ばれるのはちょっと妙だなと思っていたんだ。狩りに特化した人がいてもおかしくないけど、最低限の戦闘力は必要だからね」 「あなたはボケッとした見た目に反して、いろいろ鋭いから苦手ですよ。馬鹿正直な弟とは正反対ですね」 「ありがとう。でも今度うちの弟をハメたら、問答無用で首を刎ねるからね」 「生憎、今はそんなことする意味がありません。そう易々と刎頸の口実は与えませんよ」  兄に対してかなりズケズケ言っているロシェ。  ジークやユーベル等の友人ならともかく、下位ランカーからこのような口を利かれるのは初めて見た。  ……いや、厳密には彼は、エインヘリヤルではないのかもしれないが。 「ええと……それで、きみは一体何をしに?」  ひとまず一番気になっていたことを尋ねたら、ロシェはあっさりこう言った。 「お人好しの戦士が、ほとんど上半身裸で歩き回っているものですから。ちょっとからかってやりたくなったんです」 「えっ!? あ、いや、これは変なことしてたんじゃなくて、事故みたいなもので……」 「事故で盛大にやらかしたんですか? はしたないですね」 「違うんだ! 本当にそんなんじゃ……むぐっ!」 「声が大きいよ。恥ずかしいのはわかるけどね」  兄も、悪ノリしてこちらの口を塞いでくる。これ以上はますます誤解が深まるので、本当に勘弁して欲しい。服が破れているのはヤドリギのせいであって、決して兄といかがわしいことをしていたわけではない。そんな暇もなかったし。  するとロシェが呆れながら腰に手を当てた。

ともだちにシェアしよう!