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第500話
「あなた達はロキ様を邪悪な巨人だと思ってるでしょうけど、僕からしてみれば、オーディンだってかなり自己中です。そもそもエインヘリヤルを集め始めたのは、自分がラグナロクで死にたくなかったからですよ。知ってます? オーディンってラグナロクで『フェンリルに飲み込まれて死ぬ』って予言されてたって」
「えっ……?」
「で、地上でわざと戦争を起こしたり、強者を自ら殺したりして、自分の兵を集めていたわけです。その作業はヴァルキリーとか、たまにロキ様に手伝わせていたみたいですけどね」
「……あ」
ハッとして兄を見たら、案の定兄は苦い顔をしていた。兄は生前、弟に化けたロキに殺されてヴァルハラに来たのだ……。
ロシェが半ば呆れながら続ける。
「そういうことなんで、あなた達もオーディンのために戦ってやることはないと思いますよ。出陣なんかせずに、こっそりどこかに隠れているのが賢明です。いくら神器を持たされたからって、いちエインヘリヤルが戦闘向きの巨人に勝てるはずないですから」
「…………」
「じゃ、僕はこれで。もう二度と会うことはないでしょうけど、お元気で」
言いたい放題言いまくって、ロシェは満足げに立ち去っていった。あんなに喋る彼は初めてだったので、少し呆気にとられてしまった。
「うーん……何だったんだろうね、彼は」
兄も呆れながら腰に手を当てる。
「結局、お前に衣装を貸して、裏技を教えて、神々の裏話まで喋ってくれて……。なんか親切すぎて気味が悪いくらいなんだけど」
「……彼の心情はよくわからないが、最後だから餞別代わりだったのかもしれないな。ラグナロクがアース神と巨人族との戦いだとしたら、俺たちとロシェは敵同士だ。だから、この機に何かしたくなったのかもしれない」
「そんなものかな……。まあ、お前は彼にも優しくしてたし、それなりに感謝の思いはあったのかもね。人徳だなぁ」
「そんな大袈裟なものじゃないけどな。でも、いろいろ助かったのは事実だ」
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