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第501話

「かもね。じゃ、とりあえず山に入ってみよう。同じ方角にずっと歩いて行けば、いつかはヴァルハラに辿り着けるはずだし。それに、山なら果物とか肉とかもあるよね」 「ああ、そうだな……」  巨人に見つからないよう気を付けながら、アクセルは兄と山の麓に歩いていった。  山の入口はよくある茂みになっていて、人が歩けそうな道はなかった。道らしい道と言ったら獣道くらいか。もちろん、看板の類いも立っていない。  ――これじゃ、どの方向が正解かわからないんだが……。  同じ方角にずっと歩いて行けば、いつかは……というのには賛成する。けれど、その方角が間違っていて、また違う世界に辿り着いてしまったら元も子もない。  何とかヴァルハラの方角だけでもわからないものだろうか……。 「ほら、何ボーッとしてるの? 行くよ」  入口であれこれ迷っていると、兄は一人でスタスタと山に入っていってしまった。  アクセルは慌てて兄を追いかけた。 「ちょ、兄上待ってくれ、そんな闇雲に歩いても……」 「大丈夫だよ。ヴァルハラはアース神の世界(アースガルズ)の一部だもん。ならきっと東側にあるはずだ。東に向かって歩いていけば、アース神の世界(アースガルズ)には辿り着ける」 「東……? それもヴァルハラの図書館にあった本の情報か?」 「うん、そう。アース神の世界(アースガルズ)は太陽が昇る方角にある、って書いてあったんだ。暇つぶしのつもりだったけど、読んでおいてよかったよ」 「そ、そうか……」  個人的には、兄が本の内容を事細かに覚えていることの方が驚きなのだが。 「それにしても、さすがにお腹空いたねぇ。イノシシでも出てきて欲しいよ」  そんなことを言い出すので、アクセルは少し苦笑した。 「この装備で狩りをするのは無茶だと思うぞ。……でも気持ちはわかる。俺もいい加減空腹だ」 「でしょう? ガッツリお肉でも食べて元気出したいよね」 「イノシシのシチューが懐かしいよ。今なら何度でもおかわりできそうだ」

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