504 / 2198
第504話
「おーい、アクセル」
兄に呼びかけられ、アクセルはそちらを振り返った。兄は川の中で左手を大きく振っていた。
何かと思い、川岸まで行ってみると、
「はい、ご飯ゲットしたよ」
「……!」
いきなり太刀の切っ先をこちらに向けられ、反射的に半歩後ろに下がった。見れば、鯉のような魚が串刺しになっている。遊泳していたかと思えば、魚を見つけて捕獲するとは……この兄は相変わらず行動が読めない。
アクセルは刺さった魚を抜き取り、聞いた。
「……これをご飯にするのか?」
「そうだよ。お前、これ料理しといて」
「料理って……この状況じゃ、焼くことしかできないんだが」
「いいんじゃない、それで? 私だってそんな、レストランで出てくるようなフルコースは求めてないよ」
「……求められても出せないけどな」
「他にも美味しそうな食材見つけたら捕まえてくるねー。それじゃ」
そう言い置き、兄は再び水の中に入っていった。
――美味しそうな食材……ねぇ?
こういう普通の魚ならいいが、カニとかタコとか……イソギンチャクとかを捕まえて来られたらどうしよう。食材をゲットしてくれるのはありがたいけれど、最低限焼くだけで済む食材にして欲しい。下味をつけることはできないし。
――とりあえず、火起こしの準備でもするか……。
アクセルはすぐ近くの茂みで落ち葉や枯れ枝を拾ってきて、手頃な小石も集めた。そして小石を丸く並べてサークルを作り、火起こしのスペースを作った。邪魔になりそうな石やゴミを取り除き、サークル内に落ち葉と枯れ枝を積んでいく。
風除けになりそうな大きめの石を立てたところで、ちょっと一息ついた。
――ここからが大変なんだよな……。
マッチ等の道具があれば楽だったが、生憎今は手持ちがない。
仕方なくアクセルは、火打ちに向いていそうな石を探し出し、水分のなくなった落ち葉の上でせっせと火花を散らした。
ともだちにシェアしよう!