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第504話

「おーい、アクセル」  兄に呼びかけられ、アクセルはそちらを振り返った。兄は川の中で左手を大きく振っていた。  何かと思い、川岸まで行ってみると、 「はい、ご飯ゲットしたよ」 「……!」  いきなり太刀の切っ先をこちらに向けられ、反射的に半歩後ろに下がった。見れば、鯉のような魚が串刺しになっている。遊泳していたかと思えば、魚を見つけて捕獲するとは……この兄は相変わらず行動が読めない。  アクセルは刺さった魚を抜き取り、聞いた。 「……これをご飯にするのか?」 「そうだよ。お前、これ料理しといて」 「料理って……この状況じゃ、焼くことしかできないんだが」 「いいんじゃない、それで? 私だってそんな、レストランで出てくるようなフルコースは求めてないよ」 「……求められても出せないけどな」 「他にも美味しそうな食材見つけたら捕まえてくるねー。それじゃ」  そう言い置き、兄は再び水の中に入っていった。  ――美味しそうな食材……ねぇ?  こういう普通の魚ならいいが、カニとかタコとか……イソギンチャクとかを捕まえて来られたらどうしよう。食材をゲットしてくれるのはありがたいけれど、最低限焼くだけで済む食材にして欲しい。下味をつけることはできないし。  ――とりあえず、火起こしの準備でもするか……。  アクセルはすぐ近くの茂みで落ち葉や枯れ枝を拾ってきて、手頃な小石も集めた。そして小石を丸く並べてサークルを作り、火起こしのスペースを作った。邪魔になりそうな石やゴミを取り除き、サークル内に落ち葉と枯れ枝を積んでいく。  風除けになりそうな大きめの石を立てたところで、ちょっと一息ついた。  ――ここからが大変なんだよな……。  マッチ等の道具があれば楽だったが、生憎今は手持ちがない。  仕方なくアクセルは、火打ちに向いていそうな石を探し出し、水分のなくなった落ち葉の上でせっせと火花を散らした。

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