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第507話

 道に迷ったらマズいので、川岸からあまり離れない場所を歩くことにした。  ――と言っても、周辺に実がなっていそうな木なんてないんだよな……。  巨人の国からここまで歩いてきたわけだが、実のなる木は一本も見当たらなかった。りんごとか桃とかさくらんぼ等々、そういうハッキリした果物を求めていたわけではないが、全くのゼロというのも少し困ってしまう。  でもせっかく散策しているのだし、兄上のためにも何かしら持って帰りたい……と、アクセルは更に奥へと入っていった。  少し進むと、うっすらと木々の色が変わってきた。今まで深い緑色だったのが、どことなく黄色みがかった葉の色が多くなってきた。樹木の種類が変わってきた証拠だ。  ――もしかしたら何かあるかも……。  少し期待を込めて、注意深く周りを見て回った。  木の実とは言わない。食べられるキノコとか山菜とか、そういうのでも万々歳だ。今は少しでも食料が欲しい。次にいつ食べ物にありつけるかわからないんだし。  そう思い、アクセルは一度その場にしゃがんで茂みを掻き分けつつ、目を凝らした。  ほとんどはただの雑草のようだったが、一部はよく見かける山菜に似ていた。ワラビとか、タラの芽とか。  ――意外とあるじゃないか、山菜……あ、こっちにも。  何故かツクシも見つけてしまい、季節外れの不思議に一人首をかしげた。  もっとも、ここは神の世界なので季節も何もないのかもしれないが。  まあ山菜が集められれば何でもいいや……と思いつつ、黙々と収穫を続ける。丈の長い黒服の裾をたくし上げ、採った山菜を次々そこに放り込んでいった。籠がないから、ローブのような黒服はとても役に立った。  そうやって山菜を集め続け、そろそろ服もいっぱいだ……と思ったところで、よいしょと腰を上げる。  そこで周囲を見回して気付いた。  ――しまった、ここどこだ……?

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