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第513話

 確かヘルは、ロキの子供には巨大な蛇もいると言っていた。そしてロキは巨人族出身。  ――あの蛇、ロキの息子だったらどうしよう……。  そう考えるとぞっとする。  さっきはどうにか撃退できたが、ロキの息子がまだこの山の中をうろついているのだ。しつこく追跡してきたことしかり、このままでは終わらないかもしれない……。  ――やば……! 早く合流しないと……!  歩くスピードを速め、アクセルは急いで兄の元に向かった。  だんだん川幅が狭くなり、次第に兄の姿が見えてくる。 「兄上!」  遠目に綺麗な金髪が見えた瞬間、一気に元気が湧いてきた。  アクセルは猛ダッシュで川岸を走り、兄の元へ戻った。 「兄上えぇ!」 「……ありゃ? アクセル、何でそんなところから……って」 「……おわっ!」  あまりに夢中で走ったせいか、足元の石に躓いて盛大にすっ転んでしまった。ゴツゴツの石が多かったのもあり、かなり痛かった。 「あーあー……大丈夫? 気をつけないとだめだよ」 「だ、大丈夫だ……これくらい、たいした怪我じゃない」 「まあ、私たちはもっとすごい怪我をすることも多いしね。でもお前、昔から全然変わってないなぁ」 「? どういうことだ?」 「昔も、私のことを追いかけてよく転んで、私が駆け寄るところまでがセットだったじゃないか」 「そ、そうだな……。これはもう、一生直らないかもしれない」 「そうだね。でも、転んで泣かなくなったことは進歩かなぁ」 「泣くわけないだろ。子供じゃないんだから」  アクセルは何事もなかったかのように起き上がり、パタパタと服を叩いた。  大蛇との戦いで随分汚れてしまった。全身綺麗に洗濯したい。というか、着替えたい。 「それにしても随分遅かったね。何してたの? 髪もボサボサだし、葉っぱついてるし」 「兄上、早くヴァルハラに帰ろう。ロキの息子がこの辺をうろついているかもしれないんだ」 「……どういうこと?」

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